計測

発育測定の日
空からあたまに落ちてくる
つめたい
鉄のカーソルにおびえていた、きみの
せなかは居酒屋のカウンターに曲がったままだ
いまでは立て肘のグラスのほうが
視線よりも高くにあるから
ただしく、浴びるように
その星印のひかりを飲んでいる

―――浄メラレタ、くれぞーるノ、甘イニオイ
   生殖器ノ、手前マデ脱イデイテ
   ウッスラト混ザル、尿ノニオイヲ
   自分ノモノデナイカト怖レタ。
   くらすめいとノ、行列カラ離レテ
   計器ヲ、ナニカ、刑具ノヨウニ、見テイタト思ウ。

あらかじめ長く話しすぎた夜は
いつまでもみちることがない
黙りこむたび
息づいてあるものの務めのように
育つ爪を噛むきみの
永久歯が
みずからの務めの
果たしえないことに苛立つようにきしり
十指にわたる
身の丈のはじを詰めてゆく
深爪は
わずかに
不在へと深まろうとするが
「血」
静かなふちの
疼きに気づいてしまうとき
なにが
われに帰るのか
どこから
きみに帰ってきたのか

―――ワタシニハ、コドモガ、ナイト思ウ。
   落チツク所モ、ナイト思ウ。
   細カク、細カク、清算ヲシタイ

「せすじをのばして」
「あごをひいて」
命じられたからだの爪先は凝り
肛門は窄まり
内密な死を待機するが
わずかに踵の浮いてしまう弓張りを
やさしく、ひややかなカーソルの重みで
押さえられたとき
きみは骨とともに沈み
きみの幽霊とわずかに遊離した
吐き気をこらえる薄明の
鏡にきみがうつる
震えながら
それはきみと、せいくらべする


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