他人の波止場で

ねごと。
え?
ねごと、言ってたよ
「海に行かなきゃ」って
そっか
で、帰らない方向の
始発がうごき
コンテナの渓谷を
かすめるわれらのコンテンツの
貧困は
たとえばむなしさの巨大マーケットや
幽霊船の
うわさばなしを呼びよせていた
ねむってるヒトの言葉に
返事をしたら
発狂するってどっちがくるうの?
そんな想像を
絶する。おーきなおーきな
ヨコハマ港、大桟橋のたもと
パスポート不在の
みずと
そらと
こんくりーとは
感傷やフナムシのはびこるすきもないうえ
ホモサピエンスを散歩させる犬さえおらず
めっちゃ寒い
そもそもなんの夢みてたわけ?
つづきとかあんのこれ?
覚えてない。
だいたい夢とかみてないとおもう
ふざけんなちょー波止場だべどうすんだこれ
ちょー波止場だし
みえてしまう
わたしたちの途方のかぎりは、鈍色
それでもなにも
カラフルに
じぶんじしんで夢みた夢だと
偽証しないなら
観覧車も、ランドマークタワーも
ぶったいとしてとおく
ただ、風の
つよいところに立つ
鎖ごしに
あのなみのなまえはなみそのなみのなまえもなみ
それきりで
遠景のほかない一地帯が
太陽に頬をよせ
朝はそっと、うちゅうからきていて
ごろーん
芝生みっけー
しあわせもんだな
ふふふ果たしてそうかな?
そうじゃねえだろうなクソ寒いし金もない
政府もおまえも腐敗している
ぐふ
ほんとにきいたの?
え?
ねごと。そっちの夢だか嘘なんじゃん?
あれは
みず
あれは
おひさん
これ
しばふ
記憶はどうしてゆびさせばいい
とりあえず
鼻からゆびをぬきなさい
しんじられるほかない
弱いもの
げんざいをこしらえたもののかつてが
げんざいの物量としてのみあるならば
考えんな
こっからまっすぐ一〇〇海里いったとこに
だれもしらない
波風がさかまきつづけてる
それがぼくの記憶だ、と口にしたきみは
うっかりテキトーでなくほんとのこと言っちゃってないか
不安になる
ふたりが
しずかな開戦の日のように
水平線をにらみつづける
かくじつに。
無意味に
それぞれの、
萎えた花のけはいのある部屋へ
くっせつした身がらをのせる電車は
すこしばかりぬくい
コンテナになり
ねむるわたしに返事をしたか
不意に
たずねてみたくなったが
きみは重たいからだになったきり
ひどい顔でねむって
ときおり
くもり空の海洋にひびく
無人船の軋みのように
ねごとを言う
目覚めたきみには知りえない言葉を
げんざいじへの押し黙りかたのかたちとして
「ぼうめいとか、しなくちゃ」
こんどな。
返事をする


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