水のものなる


本日は晴天なり
を目ざましに吹きこむ、きみのえたかった
フラット
紐をひいたら時刻が終わり
緑のくらがりに
とどまるふちもない、じかん

うしろから過ぎこしてゆく
おおきいせいの人につらなれば
とうめいと
とうめいに挟まれる
自動ドア、なんてへだたり
認証のほしい
きみの少女がモドキというひびきをおそれている
ダマシやニセという尾頭も
ちゃんとしたそれの名で呼ばれて
毒持ちなのはすき
あらわれてよ
九月
裂いて黒ければ
つきよたけ
うちのおくでぜえはあしている
あなたたちに食べさせたい
帰り道、合鍵なくし
轍のへりの
でっぱりを踏む
たかくたかくにドアノブはひかるが
空の記憶のドライヴに
アクセスできません
ファンクションが間違っています

ファンクションが間違っています
再起する
夢にまで、いつからか辿っている残業の手すじ
すじばるばかりで
入力すべき名のおぼつかない疲労
そのあいだにも
とり残された半日のタイドプールは
焼け磯に
塩からさを増してゆくのに
もはや少女はわたしから
べつのじかんにちいさく寝がえり
枕のうでを
吐息でぬくめる
うす目をあければなれない部屋が
わたしたちをひえ床に吐露していて
どうせいはいや
よわい蝸牛を
下がり葉においこむ、あの目眩は
いせいはいや
叶おうと、叶うまいと、吊られたままのてるてる坊主
いまここに戻らないイメージを検索するが
窓を割ったら空ごと割れて
ちがうちがうわたしじゃない
それならあなたはわたしの子じゃない

みなも、鏡のように
反映するな
なにも
おまえのすがたではないから

本日は晴天なり
を目ざましに吹きこむ、きみのえたかった
フラット
頬よせて嗅いだ
おとなのにおいのする手首で
物おきになった一室の
勉強机のひきだしをあける
からっぽに
びっしり書かれた注釈を、すくうように
雑巾でふく
おひさまのそばに黒い星があります
おもちゃうり場に幽霊がいます
合鍵はなくしたくなくても、なくなりました
運動会こなくていいです
そのかわり
そのかわりを教えてよ
覚えているから、きこえているから、もう、消えていいこと
水性だから
ひかってもはんとうめいだし、水性だから

とりちがえていた子の
補助輪を外す
荷台にうっすらかさねただけの、セロファン
力とは
かかわりのない手を浮かす
サイクルのかげが
すこし傾いで見切れたら
ようやく降りはじめた郊外、パーキングエリアに
もう一度だけひとりで立っている


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