凪について

ちりぢりに失われていくのが
みえる、のだから
わたしもまたちりぢりに
失われていっているだろう

           windの
 かつようけいとしてのwing
     ひとつじゃ飛べないから
              墜落の
               シルエットは
          シャドウとかしてく

部屋の
あかるい窓辺に
蛸を吊るす
手をそろりと
はなすと
ぴんとはった紐
軟体動物のおもたさは
くびれたかたちで
もう
たじろぎもしない
とりとめもなく欲したのは
そんなたしかさ

            戸外には
        風についての風
          それはふいたり
            ながれていたりしない
         風は風
           たんじゅんな
              かんたんしとして

食事なら一日ぬくのも
よくあることで、平気なのに
朝に作ったかんたんなサンドウィッチを
シンクに落として
ないたのは
風とにているかもしれない
たとえばあなたの
元気です、が口ぐせにすぎないことや
さよならという意味において
唇が頬にそれたことや
爆発的にではなく
じめじめと世界が終わっていくことや
わたしが美しくないことや
蛸を吊るすことや
もろもろの現象をおきざりにして
それでも
にているだけだけれど

      蛇口から
        ホワイトノイズは
           楓がゆれている
           楓がゆらされている
          を、ひとつにして
                なっている

わたしは、わけてもこの恣向性は
世界をすくうために
生じたのではなさそうで
起こされた微熱に
残されたかすかの気圧
生殖器をらんざつに撫ぜつづける
どうにでもなって
しまっていいのに
射精するあるいは射精しない声だけで
声だけで声だけで声だけで声だけで
それすら
かんたんしになれない

宙吊りの
蛸と
わたしと

           windの
    しゅうしけいとして
     空の青だけ透して
      こきざみに揺れていたwindow


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