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男性不妊の先生方を頼ってみてください。

こんばんは。はらメディカルクリニック院長の宮﨑です。

当院の男性不妊外来を担当してくださっているのは、日本で一番多くの男性不妊治療の診察やOPEをしている獨協医科大学埼玉医療センターの岡田弘先生と岩端威之先生です。大変ご多忙な先生方に来ていただけることになったのは前院長の原先生が亡くなり少したった頃でした。勉強会でお会いした際に、原先生によくしていただいたというエピソードを話して下さいました。そして、そのご縁で当院の男性不妊外来を担当していただけることになりました。

岡田先生は日本における男性不妊の先駆者で今も第一線でご活躍されています。先日、当院の動画撮影のために岡田先生にインタビューをさせていただきました。私は外来をしておりインタビューには同席できませんでしたが、その時の内容を書き起こした原稿を動画を撮影した方がメールしてくださいました。拝見すると、男性不妊の分野の進歩と今後へのますますの期待を感じます。男性の方はどうぞ構えずに、気軽に先生方を頼ってほしいと思いましたのでインタビューの一部を掲載させていただきます。

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▼先生の専門分野と治療内容についてお教えください
専門分野は、男性不妊です。40年間、精子の「質」にあたる精子の機能を調べる研究を続けてまいりました。また、無精子症患者さんに対する、顕微鏡化下精巣精子採取術(MD-TESE)を日本で最も早くから開始して、これまで3000例以上の手術を行ってきました。MD-TESE手術を確率するとともに、次世代の医師の育成にも取り組んでいます。

▼いま力を入れている分野、他院との違いについてお教えください
現在、最も力を入れている分野は、精子の「質」の評価です。精液量や精子濃度や精子運動率といった、一般精液検査で同じような成績の患者さんでもその不妊治療成績には大きな差が生まれています。精子の「質」を調べる検査である、精子DNA断片化指数(DNA fragmentation index DIF)を測定することで、精子の妊娠に導く力である「精子力」を評価できるようになります。この、精子の「質」を引き上げる治療を提供することで、妊娠率の向上を目指しております。

▼これからの不妊治療について先生のお考えをお聞かせください
男性不妊も、精子の「質」を評価して、治療法を選択する時代になったと考えています。例えば、人工授精を行った患者さん200例ほどのDFIのデータとその妊娠の追跡調査結果を検討したところ、DFIの値が50%を超している場合には、人工授精で妊娠に至った例はありませんでした。このことから、DFIの値が50%以上の場合には、体外受精に早期に進む方がよいという結果になります。
患者さん毎に最適な治療法を選択するための指標として、精子の「質」を評価して最適な治療法を選択する、コンパニオン診断の時代に入っていると思います。
例えば、DFIが高い値の患者さんの場合には、抗酸化剤を中心としたサプリメントを使用したり、精索静脈瘤患者さんでも手術適応を精子の「質」の評価を元に判断する、というような考え方です。
また、男性不妊という病態は、肥満やメタボリック症候群のような全身状態の1つの表現型であると考えれば、女性不妊で盛んに言われているプレコンセプショナルケアの考え方が男性不妊にも当てはまると考えられます。今後は、男性不妊を生殖能力の問題として捉えるのだけではなく、全身症状の1部であると捉えて、患者さんのトータルな健康増進を押し進める時代になっていると思います。

▼通院される患者様へメッセージをお願いします
女性は、自分の健康状態について、診断を素直に受け入れる特性を持っていますが、男性の場合は「自分は問題ないに違いない」というような根拠のない自信や恐怖心により、男性不妊であることを認識して受け入れるのは、男としてなかなか勇気がいるということです。
しかし、不妊症はカップルの病態であることを意識すれば、愛するパートナーと一緒に、お子様を授かるという、素晴らしい結果を手に入れるために、努力することは実に男らしいことだと思います。我々はこの手助けをいたしますので、ご不明な点は遠慮なくお尋ねしていただければと思います。

▼雑談中でのお話
男性不妊症については男性自身が30代、40代前半までに医療機関にかかって、ご自身の検査結果を見たり、治療に取り組むことは少ないんです。健康診断の結果でも、数値に異常が見られても男性は「前日にお酒を飲んだから」等と言い訳をして、真面目に改善や治療に取り組まない傾向があります。
女性はちょっとした数値の変動があっただけでも、医療機関にすぐに相談される方が多いです。
これが長い目でみると若い時に真面目に改善や治療に取り組んだかどうかで、全員が子供を授かるという最終的なゴールに辿り付けないということにしても、ご自身の健康状態を良い状態で保てる、ご自身の健康寿命を伸ばす意味でも大切です。性と生殖に関する健康と権利、リプロダクトヘルスプロモーションという考え方があるのですが、こういった考えにそったことができればと思っています。

また、不妊治療においては精子よりも卵が重要視される傾向がありますが、精子の取り扱いについても個人差が実はあります。精子の個別化した処理方法を考えないと最終的な良い結果に結びつかないということも我々の研究結果としてわかってきています。数年の内にこの精子についての管理方法が重要視されると考えています。

◇岡田 弘先生
医学博士 1980年神戸大学医学部医学科卒業。1985年神戸大学大学院医学研究科博士課程修了。神戸大学医学部助教授を経て2007年獨協医科大学越谷病院泌尿器科主任教授。現在獨協大学医学部特任教授。独協医科大学埼玉医療センターチーフディレクター。

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岡田先生、ありがとうございました。

岡田先生をはじめとする獨協医科大学埼玉医療センターの先生方が力を入れている精子の質は、DFI検査といって精子のDNA断片化率を検査することからスタートします。岡田先生のインタビューの中で「DFIの値が50%を超している場合には、人工授精で妊娠に至った例はありませんでした」とおっしゃっている通り、精子検査で精子濃度や運動率に問題がなくてもDNA断片化率が高く結果がでていない方を外来でもお見受けします。

タイミング療法や人工授精でなかなか結果が出ない方や、体外受精(顕微授精)の際に初期胚培養までは順調であるにも関わらずその後胚の分割スピードが急激に低下し胚盤胞の達成数が少ない場合にも精子の質の影響が考えられます。男性不妊の先生を頼ってみてください。

男性不妊外来は、第2、第4土曜日です。奥様の不妊治療は別の施設でされている方も男性不妊のご相談だけ当院を受診いただくこともできます。










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