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卵子の質の低下をわかりやすく解説

こんばんは。はらメディカルクリニック院長の宮﨑です。

不妊と年齢の関係性を表すとき「卵子の質」という言葉をよく聞くと思います。しかし、卵子の質とはどういうことなのかという点について理解されている患者様は少ない印象がありますので、なるべくわかりやすく説明したいと思います。

多くの細胞は「核(DNAの集合体が染色体、染色体の集合体が核)」と「細胞質」からできています。

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そして全ての細胞は、時と共に老化すると、細胞質のミトコンドリアが減少しエネルギー活動を終えて細胞は消失していきます。しかし、卵子以外の細胞は細胞分裂によって新しい細胞に入れ替わるので総合的に組織に問題は発生しません。この点が卵子とそれ以外の細胞の大きな違いです。女性は一生分の卵子を持って生まれており、生まれてから卵子が増えることはありません。

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そして体の中で最も古い細胞である卵子は、排卵や採卵をした後、精子と受精します。

事件はこの受精の時に最も多く起こります。

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卵子に精子が侵入すると卵子の第二減数分裂が再開されます。若い卵子の場合、減数分裂は正常に行われる確率が高く、染色体本数が正常な受精卵が発生しやすくなります。

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老化した卵子の場合、その減数分裂の時に染色体分離がうまくいかず染色体本数が異常な受精卵が発生します。ヒトの染色体本数は46本ですが、染色体本数が多かったり少なかったりすると、受精をしなかったり、受精をしても途中で発生が停止して胚盤胞まで育たなかったり、発生が進み妊娠まで至ったとしても、その先で流産をするか、あるいはダウン症などで知られる先天性の染色体異常を有した児の誕生に繋がります。

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染色体異常が発生する確立は35歳で50%を超えます。そのため、産婦人科医は35歳までの妊娠を推奨しています。その後、38歳で80%、40歳で96%という高確率で発生すると考えられています。

胚盤胞まで育ったグレードの良い胚であっても、見た目ではわからない染色体異常を有している場合があります。胚移植不成功の原因でもっとも多いのが染色体異常です。

2018年の日本産科婦人科学会の発表によると、胚移植当たりの生産率(出産率)は30歳で34%、35歳で30%、40歳で17%、45歳で2.8%と年齢の上昇とともに生産率も下がっていることがわかります。これは年齢の上昇に伴い染色体異常を有する卵子が増加するためです。

一方、米国疾病予防管理センターのデータによると若年女性からの提供卵子を用いた場合、移植する女性年齢の上昇とは無関係に高い生産率が得られることが報告されています。つまり、加齢による子宮への影響は少なく、妊娠率の低下の主な原因は「卵子の質の低下」ということを示唆しています。

卵子の質の低下は、時間の経過とともに誰にでも生じる問題です。卵子の質の低下を止めることや治すことはできないということをご夫婦で共有して妊活を進めていただきたいと思います。

35歳以上の妊活は、”最短妊娠”を意識して選択しましょう。

1、タイミング療法、人工授精の期間は長すぎませんか?
当院のタイミング療法で妊娠される方の平均周期数は2.6周期(約2.6か月)、人工授精で妊娠される方の平均周期数は2.7周期(約2.7か月)です。不妊治療は続けるほどに状態が改善する医療ではなく、周期ごとに妊娠の確立を高めるための医療です。そのため、成功率は回数を経るごとに低下します。34歳以下であれば、これらの治療を長く行っても最終的に妊娠の時期を逸するリスクは少ないのですが、35歳以上になると老化する卵子のことを考えないわけにはいきませんね。まずは体外受精説明会にご参加いただき、体外受精とはどのような治療でなぜこの方法であれば妊娠率が高いのかを知っていただいた上で、あとどのくらいタイミング療法や人工授精を続けるかについてご夫婦で計画を立ててみてもよいでしょう。体外受精説明会はこちらからお申込みいただけます。

2、体外受精に進んでいる方は、1採卵当たりの妊娠率を意識しましょう。1胚移植当たりで考えてしまうと時間がかかります。また、胚移植の際はホルモン量と着床窓に関連するプロゲステロン被ばく時間をしっかり管理しましょう。胚移植周期は細かい管理の積み重ねで妊娠率が大きく上昇することを当院は2020年に経験しました。妊娠率を高めるためのさまざまな処置も有効です。

3、サプリメントをご希望の場合は、レスベラトロールとメラトニンの服用が有効的と考えています。レスベラトロールは天然のポリフェノールの一種で、抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用を示します。動物実験では、細胞内でSIRT1(サーチュイン1)を活性化し、SIRT1を介して抗酸化作用を示し、ミトコンドリアの合成を活性化し老化現象を抑制が確認されました。

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レスベラトロールだけの服用よりもメラトニンと併用の方が結果が良いようです。レスベラトロールはインターネットで検索すると複数ありますが、純度の高いレスベラトロールを使いヒト血中濃度の確認ができているものがよいです。服用を検討されたい方は診察でお話しください。

それでは、今日はこのへんで。2月も明日で終わりですね。今日もお疲れ様でした。




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