黒沢清 Chime 感想
黒沢清監督のChimeを観てきました。
以下ネタバレ含む感想です
まず、この映画、すべてに脈絡がない。不可解かつ不愉快な出来事が何度も起きるが、その理由も明かされない。
まず料理教室の授業シーンから始まる。主人公は料理教室の先生をしている男性のようだ。
「人の声のようなチャイムが聞こえる」と様子のおかしい男性生徒がいて、「脳を入れ替えられた」と統合失調症のようなことを言って、みんなの前で包丁で首を刺して死ぬ。
「人の声のようなチャイム」が「リング」のビデオテープのように伝染する呪いのようなもので、そのチャイムがやがて料理教室の先生にも聞こえてしまい、怪奇現象が起きる……と予想したが、その後は全く違った。
というか、この男子生徒の話もこれっきり、全く出てこない。
その後、この料理教室の先生が突然女生徒をメッタ刺しにして山に埋めたり、
明らかに先生を疑っているような刑事(でもこの人も怪しい!)が出てきたり、
一歩そとに出ると急に全ての音が消えたり、
逆に不愉快なノイズしか聞こえない世界になったり、
インターフォンが鳴ってもカメラが真っ暗で誰もいなかったり、
料理教室の先生の家族団欒シーンがあるが、
その時も息子が急に意味不明なタイミングで笑い出したり、
嫁が意味不明なタイミングで空き缶を捨て出したり
また、嫁がわざとらしいくらい甲斐甲斐しく先生の世話を焼く描写も不気味だった。(サザエさんのフネさんみたいな感じ)
恐ろしい事はたくさん起きるけど、
ひとつひとつのエピソードの繋がりも見えず、
起きる恐怖に脈絡がなく、理由もなく、想定も出来ないので、
観客はだんだんと常に緊張状態を強いられるようになる。
いつどこから恐怖が襲ってくるかわからず、ついにはスクリーンに包丁が映るだけでおそろしい気持ちになってしまう。
なんで?!なにが?!とつねにハテナが浮かんでいる映画だった。恐怖はもちろん、不安にさせる映画だった。日常に潜む狂気というか、一寸先は闇を感じられた。
45分と短い映画だが、これが2時間も続けば発狂すると思う。
とても面白い映画だった。