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君の名は。ネタバレあり感想

3.11大震災を思い出す努力を

この映画は3.11大震災をテーマにしている。

きっと多くの方たちもあの災害を思い出し、ストーリーに重ねてあの頃の記憶が呼び起こされたことだろう。

テレビやネットで何度も繰り返された多くのショッキングな記憶である。

2011年、大震災による津波で、陸前高田、南三陸などの多くの土地で一瞬にして多くの命が失われた。

累計2万人弱にも昇る犠牲を出した忘れ得ぬ災害。

あの日に起きた大地震・津波・あるいは原発事故に遭遇した方々の胸中はいかなるものだったのか。

遠くから見ていた世界の人が「まさかこんなことが」と驚愕し、自然の恐怖に絶望したはずだ。

特に私たち日本人はただ一瞬の天変地異により、多くの命が絶命するという恐怖を思い起こさずにはいられない。

それらをリアルに思い呼び起こさせるひとつに秋祭りのシーンがある。

劇中では「逃げろ」「動くな」という相反する放送が描かれている。

まさに現実の世界では想像以上の混乱や多くの動揺が広がっていたのでないか。

特に避難を呼びかけた、さやチンの村内放送は心に突き刺さるシーンである。

従来の道徳観念に怯えながらも、目に溢れんばかりの涙をため、村民に避難を呼びかける姿は印象深い。

かつて南三陸町で、津波に飲みこまれながらも最期まで避難の放送を続けた「遠藤未希さん」を思い出さずにいられようか。

彼女はどのような思いで市庁舎に残り、波に飲まれていく町を見たのであろう。

僕はその光景を感じると、映画を見た後でも涙が流れてしまう。

そしてこのような自然災害への恐怖、そして犠牲となった人たちへの弔いの思いを忘れてはいけない義務感が沸き立つ。

しかし、残念ながら、苦やしながら、人間の脳は忘れてしまうものである。

時が経つにつれ、あの災害は過去の歴史の中に飲み込まれていく。

恐らく震災とは関係のない地方の、当時10代未満の若年層にとって特にそうであろう。

現に今の高校生にとって、5年前の出来事というのは大人が想像する以上に、遥か過去の記憶となっている。

災害に見舞われた人間すら、その記憶は時に流され、癒され、歴史になってしまう。

例えば相変わらず役所は「想定外の災害」だと釈明を続けている。

原発などを取り巻く役所と土建屋の関係は変わっていないのではないだろうか。

思い出そう。記録にとどめよう。その努力をしよう。

この映画ではそれらの義務感を感じてしまうほどの迫力を感じた。

震災から5年。あの大震災を思い起こす努力をしなくてはいけないのではないだろうか。記憶が薄れている若年層に語り続けなくてはいけないのだろうか。

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