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あなたもお腹ヨワヨワ倶楽部に入部しませんか?

私は音楽が好きだ。好き嫌いはない方だが特にこれといったジャンルに特化しているわけではなく分け隔てなく聴いている。
ピアノ講師の母の影響で幼稚園ではエレクトーン、ピアノ、小学校ではドラム、中高では吹奏楽部(太っていたため半ば無理やりチューバを担当させられた、ドラムを叩きたかったのに)、大学ではバンドサークルでベースを弾いた。そのため私の人格形成から青春まで音楽染であった。

大学のサークルは一般的なチャラチャラしたものではなく、ステージセッティングから音響照明などバンド演奏に関することを大学内の施設を借りて自分たちの手で一から作るようなものだった。サークル員は150人くらいいたと思うが、連携や統率が必要であるため部活のような厳しさがあった。
人生で一番時間にルーズな大学生時代の中、遅刻でもすれば全員の前で怒られるような厳しさだったため、なんとしても時間は死守する必要があった。なんとも自分と相性の悪いこと。ライブの時期になると早朝から集会が行われるのであった。

朝はとりわけトイレに篭る時間が長くなる。そのため朝が早い時はかなり時間には余裕を持って起床する。夜中の3時くらいまでバンド練習、そして朝の6時ごろに集合なんて頭のおかしいスケジュールの日もあった。お腹のことを考えると最低でも1時間前には起きなければならず、ろくに寝れない日もあった。そんな毎日を過ごすと当然問題になるのが腸内環境だ。蓄積された生活悪習慣は腸内フローラを除草剤でも撒いたんかというくらい枯らし、下痢という出涸らしとなって現れる。
絶望だ。集会中は我慢をすることもあるし、なんなら自分の出番の時なんて当然トイレには行けない。日ごと消費されていくストッパ下痢止めだけが心の拠り所だった。ストッパを常に持ち歩いているが胸ポッケから出した時に、フリスクか、と突っ込まれたが健常者にとってのフリスクが私にとってのストッパなので何も間違っていない。いつもありがとうストッパ下痢止め。君無しじゃ生きられない体になっちまったよ。

ある日ふと気付いた。私の視界は狭かったのだ。集会前にトイレに行く人間が決まっていつも同じ人ということに気付いてしまったのだ。

それはもうウキウキでいつもトイレで出会う人をかき集めた。おおよそ悩みは同じらしい。そこで私はお腹ヨワヨワ倶楽部という名のお悩み相談所を作り、お腹弱々あるあるや対策方法など話し合った。10人くらい集まった。
「ウォシュレットは時に人間に牙をむく」
「個室の順番待ちの時中からモンストの起動音が流れた時に湧く殺意」
「公衆便所のトイレットペーパーの湿り気で拭く時のなんとも言えなさ」
などしょうもないことを話した。メジャーでない海外に旅行に行って日本人に会った時もきっと同じ気持ちになるんだろうなと思った。

創部して1ヶ月ほどして後輩から一度みんなで飲みましょうよと言われた。早速計画に移そうと思ったが、いや待てよ、どこでやろうか。
そう、お腹ヨワヨワ倶楽部はおよそ10人、こんな腹の弱い人間が居酒屋にでも行けばトイレは大渋滞を起こすのではないだろうか。誰かの家は?当然大学生の一人暮らしのアパートにトイレは2つあるはずがない。困ったな。

どうして居酒屋のトイレは1つか2つなのだろうか。昔トイレをゲロ吐いている人に占領され近くのコンビニに駆け寄ったが「当店はトイレの貸し出しをしておりません」という非情な張り紙を背に、ダッシュともとれる早歩きで駅までいったことがある。あの時の私の肛門括約筋の頑張りを褒めてあげたい。見たことない色の汗をかいていたと思う。そんな思いは二度とごめんだし同志に同じ思いをさせるわけにはいかない。その胸中を部員に打ち明け泣く泣く飲み会は中止となった。

飲み会に腹が弱い人が2人以上いると成立しないと思っている。なぜならその2人でトイレを占拠する可能性があるからだ。よってあの時の部としての選択は間違っていなかったと思う。それが周りへの配慮ってものでもあるだろう。きっと。そうでもなきゃ同士の無念が晴らされないってもんだ。そうして部の活動は時々集会の時に集まってあーだこーだ言う程度の活動を行った。活動と言えるのかこれ。

あの部では意外と同じことで悩んでいる人は多いんだなと思った。それぞれの悩みに自己流で解決策を立てたり、諦めとも取れる対処をしていた。ただあの悩みを共有する空間は嬉しさとか楽しさがあったと思う。うんこ漏らしたことは笑い話になるし、なんならどこで漏らしたかで競い合ったくらいだ。喉元過ぎれば熱さを忘れるとは言うが、なんなら胃を通り越して腸の熱さを感じることがある私のような同志はまだいるはずだ。ぜひ悩みを共有して笑い話に変えたいものだ。

と言うことであなたもお腹ヨワヨワ倶楽部に入部しませんか?体験入部も大歓迎です!


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