人を愛するとはなんて悲劇で喜劇なのだろう

週末に野田秀樹のQを観た

なんの前情報も入れずに観たので時代はいつなのか、なんの話か全くわからない
しかしすぐにロミオとジュリエットの話、そして源平合戦になぞらえている、恋に落ちた時期の若い2人と何年も経ってしまった今の2人が交錯していく話だとわかる
そして、これは戦争を描いた話だということも後々わかってくる

野田秀樹の作品でタイトルを忘れてしまったが、やはり松たか子が主演で戦争を描いたものを観たことを思い出す
あれは、戦争で弟を殺された姉の話で、自分の大切な弟を殺され慟哭に落ちた姉が、怒りの中、何度も何度も全身から悲しみの声をあげる姿と声が印象的だった
自分のかけがえのない大切なものを奪われても、本当に許せるのか、そんなことを問われている芝居だった

今回5日間の燃え上がる恋愛をした2人は
源氏がた、平氏がたに挟まれ、駆け落ちも失敗し、それぞれが名前を抹殺され、名前のない人として生き続けていく。
相手は死んだと聞かされたまま。

ロミオの上川隆也は、シベリアへ送られ、強制労働をさせられる
初めはジュリエのことを思うことで保っていられたものが
食糧を減らされ、身体的に壊れていくのに伴い、心情が変化していく
名前が無いことで、釈放もされない

平清盛と瓜二つだった男竹中直人に渡したことばのラブレターは「あなたのことはもう愛していません」という言葉で始まる

けれどもその言葉の奥深くに秘められた想いが届く時
ようやく2人の過去も現在もひとつに結ばれていく
けれどそれは一瞬で、すぐに消え去る

人を想う気持ちとは
なんと不確かで確かなものなのだろう
本当に人を愛するとは
なんて悲劇で喜劇なのだろう

それはとても美しくて静かだ

若い2人の本能のような反応のようなスパークは
存在してるだけでそれらを引き起こしていく
歳を重ねるとは、それでは納得できない自我が前へと出ていくことなのだろう

分別なんてくそくらえだ!
物づくりとはつじつま合わせのところと
理由もなくそうなのだというところとの塩梅なのだなぁ