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熊野のまっくらな山の中で

熊野の山の中でテントをはる
夜,たき火を囲んでその周りにシートをひいてゴロゴロする
曇っていたので天の川は見えないが
おりひめ、ひこぼしや、火星、白鳥座などはみえるときもあった
濃い霧が発生して、空に向けて懐中電灯をつけると、その水の粒が見える
真っ暗なのに、空が下に落ちてくるように感じる

話しているうちに空が上へと上がったような気がする
霧がなくなったのだ
虫の声がきこえはじめる
霧が発生している時には泣いてなかったのか、聴こえなかったのか

遠くで鹿がなきあう
新月であっても夜、空は暗くはない
世界から街の灯りが無くならない限り
都会の光の波動のせいで曇りの空は明るいのだそうだ

霧が発生したりなくなったりするたびに
空の高さや木の影が遠くなったり近くなったりする
そんなことを真っ暗な山の中で地面に寝ながら体験した


夜中にひとりでテントに入ってしばらくすると「ズズズ」「ズズズ」と何かが引きずられながら移動している音が聞こえる
その音が私のテントに近づいてくるようだ
何度かテントの中から叩いてみるが、その音は一向に止まず
どんどん音が近づき
やがてわたしのテントを一周する
大きなものではないようだが
怖くて外をのぞくこともできず
寝袋に小さくなって身を固くしているうちに眠ってしまった

朝になってきてくれた山の人にいっても皆笑うばかり
つちのこちゃうか?
山の神やろ?

いやいや、そんなありがたいものではなく
人間の出している気配とはちがっているのだけはわかった
あれはなんだったのだろうか

ありありありがとう!
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和歌山在住。表現教育家。表現の場づくりを全国各地望まれればどこにでも出向いていく。朗読を通して身体と声の関係、自分の声を出すことなどをメインに行う。朗読劇演出。熊野の山をこよなく愛し、ライフワークで森林活動も行う。美味しいものを食べるのも作るのも好き。
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