嘘をつくことと、正直でいること
大阪のある就労支援団体主催で「裸の王様」でアプライド・ドラマをやってきました。
アプライド・ドラマとは応用演劇とも訳されていて、お話を進めながら その登場人物になってやりとりをしたり、自分だったらどうするかを考えて参加者同士ディスカッションをしたりする参加する演劇活動です。
「裸の王様」は、ご存知の通りアンデルセンのお話で、洋服の大好きな王様に、詐欺師が「自分に相応しくない仕事をしている人とバカな人には見えない布」を用意できる、と人々に信じ込ませることから話は始まります。王様がその布を買った途端に、王様をはじめとした全員が見えなかったらどうしようと怯え、見えないのに、見えているとうそをつくのです。
その場所は、10代後 から64歳までの就労支援であり、生活支援であり、社会的なつながりを持つ居場所でもあります。
そこには面接に来られることがやっとの方から、ようやく場所に慣れてきた方など、様々な状況の方がいらっしゃいます。
アプライド・ドラマのおもしろさは、題材は同じなのに、
その時の場所や人によって話の合間に伺う感想や参加者の関心が違い、活動内容や盛り上がりが変化するところです。
または、それに合わせて切り口を変えることができる所です。
今回はやりながら「嘘を言う、正直に言うの二者択一の間でみんなで大いにゆれてみること」を主たる活動にしてみました。
普段から正直もので頭のよさを自負している大臣が、王様の命令でさぎ師が織っている最中の布を見に行く場面。
はたして、見えない。
さて大臣は、王様に
自分には見えなかったというか、それとも見えたと嘘をつくか。
自分ならどうするかをもとに、みんなで大臣がするべき行動を考えました。
絶対正直に言うべき!あとで嘘に嘘を重ねなくてはいけなくなる!
嘘言うた方がいい。王様にそのあとどんなふうに思われるか、、、。
嘘をつく派、正直に言う派の二手に分かれて、道を作ります。
その道を大臣役が悩みながら歩きます。
大臣が道を歩く度に、それぞれがささやきかけるのです。
「正直に言わないと、後で後悔するよ」
「どうせ、だれも本当のことを言わないんだから嘘をつかないと、バカを見るよ」
一人一人が順番に大臣役も経験してもらい、その道を歩いてもらいました。
すると、最初は正直に言うと固く決めた人も、うそをついたほうがいいと言う道が気になり、ついついそちらへふらふらと行きそうになったり
嘘をつくと決めた人も、「結局あとで大変になるよ!」という言葉にうなずいてみたり
みんな「どっちもわかる〜!!」と頭を抱えてしまいました。
最後に、日常生活にこういったことはないだろうか、についてグループで話し合いました。
嘘はいけないと思いながらもついつい逃げるためにいつも嘘をついてしまう。 ついつい本当のことを言ってしまい、皆から嫌われる。 嘘を言う人も正直である人もそれぞれの悩みを抱えているようです。
利用者の方だけでなく、スタッフの人たちも日頃抱える日々の悩みを話し
逆に利用者さんに励まされていました。
アプライドドラマをやると、みんなおんなじ立場になってディスカッションし合うことになるんですよね。
そこがドラマ活動のいいところだなと思います。
そのほか、色とりどりのスカーフを素材に着飾ったり
行進曲を使って王様のパレードをやってみたりと
非日常の中の世界も堪能しました。