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痛い時は甘えたい

お腹が痛い。

数日前から痛みが続いている。
何かを食べると痛くなり、しばらくすると治る。
とにかく食べすぎない方がいいな、と薄々気づいてはいたものの、こちとら物心ついた頃から年中食べ盛りのうえ、生理前ときている。腹痛は少しの間我慢すれば消え去るし、多少の痛みは織り込み済みだ。それでも食べたいのだ。
なんなら、お腹の調子が悪いということはうまく腸が機能していないわけで、食べても栄養は吸収されていないんじゃないか?じゃあ食べても太らず食欲を満たせる、こんな機会を逃す手はないのではないか?
私って「食べてもいい」方向に論理を展開するのがなんて上手なんだろう。好きこそ物の上手なれって、私みたいに食い意地の張った人が思い付いた言葉なんだろうか。

そんなことを思いながら麻婆茄子と納豆にご飯をおかわりして、デザートに増量パックのスナック菓子を食べたら痛みが引かなくなった。

間抜けだ...それもただの間抜けではない、食い意地の張った間抜けである。もう少し捻りのある話にして落語にでもしてほしいが、現実には得てしてオチもなければ教訓もない。

耐えられないほどの痛みでは決してない。座っていると少し辛いぐらい。とりあえずソファに寝転がってテレビを観ていれば忘れてしまうぐらいの痛さ具合だ。
それでも、お腹痛い!と主張したくなる。余裕があるが故に痛みそのものは問題ではなく、かわいそうな私!お腹痛い!という気持ちだけが発達していく。

あーお腹痛い!と思いながらソファに寝転んでいて、ふと思い出した。ここ最近私に体調不良を申告してきた母親や彼氏や隣の席の同僚。
誰も深刻な体調不良ではなかったけど、みんな訴えていた。多分大人だから、少し控えめな言い方で、まぁ大したことないけど、とか、とりあえず様子みるわ、とかなんとか言いながら、でも確かに主張していた。
みんないつも、ほんの少し甘えたいのかもしれない。だけど、体調の悪い時ぐらいしか。
だから、じゃあ、私がしてあげられるのはひたすら甘やかすことだったのかもしれない。近所の病院のリストを送ることや、医者ばりに痛みの種類を問診することではなかったのかもしれない。

軽く体調を崩した時のあのほんのり非日常な気持ち、本格的に病気になったらそんなこと言ってられないくせに、自分の状況を仔細に説明して同情してほしいあの気持ちって、健康体の時はどうしてさっぱり思い出せないんだろう。

だからここに書き残して覚えておく。
相手の気持ちなんかわからないけど、次の機会には相手を思いっきり甘やかしてみよう。それでもだめならいつも通り病院のリストを送って、問診すればいいや。

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