夏の空に

画像1

夏の空に

雲の上に出るとそこには夏の景色があった
7月31日
久しぶりに見る夏だった
陰鬱なウィルスとの戦い
地上も様変わりしていた
463人もの東京の感染者
彼らは数字ではなく
生きた人間だった

空は青く
雲はくっきり白かった
そんな空があることさえ
忘れるような
7月だった
31日のうちに30日が雨だった 
60年ぶりに台風が一つもこないとニュースが伝えていた
「台風どころではない。あれは通り過ぎるけどこの凶暴な前線はいつまでも豪雨を降らす」と友人が吐き捨てるように言った
彼の地元も大きな被害を受けていた

心にも暗い影がかかっていた

雲の上の空は
透き通る青で
この青が色々な記憶を連れてきた

親指姫のように花と草の間で遊んだ少年の日々
本が友達だったあの日々
七夕の短冊の色が踊っていた
あと少しで
あの本の続きを待っていた日に戻れそうだった

若い
若いと
持て囃された
政治家の日々は、昨日のようなのに

還暦を超えた僕は
国の衰退を
何をしていたのかと
自分を責めながら
眺めていた

何故、お前は肝心な時に小選挙区で負けたのか?
何故、お前は代表選挙にも負けたのか?
お前はどこにいたのか?

50の時に30人を越える仲間から立てと言われて断った
あの時に
目の前に現れた白日夢の通りになった

赤い目をした悪魔は
お前はこれを断り54で死ぬのだと言った
その通りになった
一つだけ違ったのは生き延びたことだった

それは僕の力ではない
僕を生かしてくれた人たちのおかげだ
前先生や増本先生、吉原部長、片淵先生や江副さんや小川さんの顔が浮かぶ
中川原理事長、そして福岡先生

雲の上の世界は
あのままの夏だった
夏の青が
残っていたことが
不思議だった

あと少しで
少年の日の
本の続きに
戻れそうだった

2020/07/31

よろしければサポートお願いいたします。