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眼前に田舎ヤンキー

この日は俺に会いたいという女性が家に来る日だった。
朝起きて自室からリビングへと続く階段を7段ほど下りたところで声が聞こえた。家族の声と会いに来た女性の声だった。どうやらもう来ているらしい。下りながら話を聞いていると女性はやたらに俺がどんな人(顔)なのか気になっているらしく、その期待を煽るような話を家族がしていて大変参った。やってくれたな。と思い、恥ずかしさに耐えられず茹でダコのように赤くなりちょうど刺身にして食えば美味しい頃合いになった俺はチョキの指を閉じた形で、右手の人差し指と中指で目元、左手の人差し指と中指は口元を隠しながら階段から下りて俺は登場した。そのまま洗面所へ顔を洗いに直行した。
顔を隠すと期待させられるものでもないのに、逆に期待させるじゃないか、阿呆。と思いながら目元と口元の指モザイクを解除し、タオルをとって鏡の前に立ち、鏡の中の俺と対面。と思いきやそこに俺はいなかった。代わりに短くてダサい前髪、眉がヤンキーのように薄く尖っているヤンキーになりきれない冴えない顔の青年が突っ立っていた。

あ?

と思うと同時に彼も「あ?」と言ったような表情。目は若干タレ目で、そばかすが点々とあり、垢抜けても抜けきれないであろうひつこい田舎感。
この男………。 自分であった。

驚愕。戦慄。
なんじゃこれは!!本来持ち合わせているヤンキーに不向きな顔面を無理やりヤンキーに仕上げた顔。眉だ!!何より眉が薄くて鋭い!

ダ、ダッセェ…。

女性の反応が想像しなくても想像できた。「いや!ほんとはこんな顔じゃないんです!」と言っても誰が信じるだろうか。ていうか元も元である。こんな顔で会えるか!!誰だ俺の前髪と眉を切った奴は!!出てこい!!

 という、それは見事な夢だった。


2019.4/24