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プロセス価値の見える化

マイケル・ポーターの「バリューチェーン」は、皆さんもご存じだと思いますが、その考え方をBranding Worksでは「ブランド・バリューチェーン」として再定義してます。

いったい、何が違うのか?

「仕入れ⇒製造加工⇒販売・マーケティング⇒フォロー」という一連の主要活動と人事総務系の支援活動によって、それぞれの各プロセスに価値が付加され企業の利益が生み出されるというのが「バリューチェーン」の基本的な考え方ですが、ポーターがこの概念を提唱した時代と現在では、メディアの環境が大きく変わってしまいました。なかでもスマホとSNSは、長い間コミュニケーションの主流であったマス・コミュニケーションの形を激変させています。

その最大のポイントが、「プロセス価値の見える化」です。

従来であれば、完成した商品の情報を販促・広報部門が集約し、その長所や効果、あるいはそこから遡った原材料や技術や生産者の「物語」を伝えたりしていた(つまり、各プロセスで付加された価値の総体を伝えていた)のですが、現在では、その一つ一つのプロセスの担当者が、リアルタイムにそれぞれの部分的な情報を発信することができるように(技術的には)なっています。しかも、従来は想定したターゲットへ、ある程度広範囲にわたって情報を伝達するしかなかったのですが、SNSの普及によって、かなり絞り込んだ対象に「ピンポイント」で、「双方向」にやりとりすることさえ可能になっているのです。

顧客の購買動機を高める重要な要因のひとつに「信頼性」がありますが、これは瞬間的に生まれるものではなく、人と人がやり取りをする「関係性」の中から生まれてくるものです。そこにSNSを軸としたコミュニケーションの大きな可能性があります。研究・開発・製造から販売・管理に至るまでのあらゆる部署が、それぞれのプロフェッショナルとしての情報を適切に届けることから生まれる「信頼性」は、一過性の広告から生まれるものと比較してどちらが強いか、その差は明らかです。

また、様々な情報がシステム化され、分析から改善までのサイクルもずいぶん高速化されてきましたが、数値ベースのものが大半です。急速に進化するAI技術を背景としたテキストマイニングやビジュアルマイニングが、今後SNSによるコミュニケーションに大きな影響を与えるであろうことは容易に想像が付きます。「価値」は、ポーターの言う「活動プロセスの総和」ではなく、「活動プロセスそのもの」になるのです。

ただ残念なことに、企業のコミュニケーション構造は、まだ全部門から独自に情報を発信できるような形にはなっていません。SNSを通じた顧客とのコミュニケーションが、生産や製造部門の「業務」として定義されていないからです。その具体的な改善手法はまだ見えませんが、全社・全部署が顧客と向き合うコミュニケーション戦略の構築は、企業の規模や業種に関係なく、あらゆる企業の課題になってくることは間違いないと思います。

これを、これからの解明すべき課題として「プロセス・ベース・ブランディング / Process Based Branding」と名付けています。

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