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RAIN③〜謎解き、次なるステージへ〜

タイマー終了のアラームが鳴った。映像は切り替わり、パンダのお面の男が現れる。 「終了だ!!!」その甲高い声は、コンクリートの、狭い室内にはよく響いた。青年は耳障りだと、モニターに映る、その男を細目で睨みながらも、ぐいと口角を上げ、口だけで笑った。不敵な笑みだった。「威勢がいいね。では早速本題だ。犯人と本当の事を言っている人間をそれぞれ答えてくれ。もちろん三分も与えたんだ、単なる運試しでは無い。その理由とセットで聴こう。そして最後に。チャンスは一度だけ」と仮面男。相も変わらず、余裕そうにほくそ笑む青年。全く動じなかった。「答えは、まず本当の事を言っている人間が村木、そして犯人が田中だ」言葉に迷いはなかった。「なるほど。では理由を問おう。なぜそう思った?」仮面男が尋ねる。「まず、この問題の前提として、演技や風災から犯人を当てに行くゲームでは無い。本当の事を言っている人間、嘘をついている人間を仮定し、それぞれの発言に矛盾が無ければ、正解となる形式だ。」と問題の前提を意気揚々と確認する青年。「ああ。それで?」仮面男は苛立ちながらも、先を促す。問題の解法を熟知したかの様な、青年の物言いに、焦りを見せている。「では、解答に至った経緯を説明しようか。解答通り、村木の発言を真実と仮定する。その場合、彼は『中西は嘘をついている』と言った。その発言を踏まえて中西に着目すると、彼女の発言『犯人は西川さんか村木さん』が嘘になる。つまり、西川も村木も犯人候補から外れる」「そうだな。『A or B(AかB)』を否定すると、『Not A nor B(Aでも無くBでも無い)』になる。その理屈は正しいね。」、青年の説明に解説を加え、助け舟を出す。だが、この解説は、一度自分の頭の中を整理する為に、自分に言い聞かせている様にも見えた。「続けろ」と横柄な態度をとる、仮面男。その命令調な言葉遣いには、明らかに焦りが窺えた。では、とはにかむ青年。「となるとだ。次に西川に着目だ。村木以外は嘘をついているという仮定だ。だから彼の発言『村木が犯人』も当然嘘となる。すなわち、村木は犯人では無い。そして、次に川村の発言『私が犯人』というのも嘘で、彼女も犯人じゃ無い。最後に田中の発言『僕は犯人ではない』も嘘となり、彼が犯人ということになる。そして前提に立ち返るが、この仮定で、発言にそれぞれ矛盾することはない。そして、他の選択肢を真と仮定した場合とは異なり、この論証には矛盾がない。したがって本当の事を言っている人間は村木、犯人は田中だ。」と鋭い眼光で、モニターを見据える青年。「・・・・・・正解だ。」ぼやく様につぶやく仮面男、かすかだが、はぁはぁと息を切らしているのが聞こえる。仮面越しにも、憔悴は伝わった。「生命をかけるには簡単すぎる問題だったよ」正解の余韻に浸り、冷笑する青年。内心では、この次は何が待っているんだろうと恐怖を感じていたが、その事をおくびにも出さないよう、取り繕った。突然、モニターの映像が打ち切られた。挑発しすぎたか、と後悔に襲われる青年。このまま放置されれば、確実に死だ。あんな得体の知れない男でも、もっと殊勝な態度を見せるべきではなかったのかと。しかし、次の瞬間、その後悔も吹き飛んだ。かちゃりとドアが解錠される音を聞いたのだった。

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