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コロナ時代のスポーツビジネス

 1ミリメートルの100万分の1(1ナノメートル)という見えない新型コロナウィルスの蔓延は、人の動きを止め、人と人の接触を妨げ、世界経済の停滞と不況を招きましたが、その中でも、特に大きな被害を受けたのがスポーツ、そして観光です。さらに厄介なのは、新規感染が一段落した後も、警報解除によって人の動きが活発化すると、たちまち広範な二次感染が起きたことです。今後、ワクチンが開発され、それが全国民に行き渡るまで、人々はこれまでとは異なった行動様式やライフスタイルを継続することになるでしょう。さらに「三密」を避けるための移動制限が長引けば、経済活動の多くの部分がオンライン化されるため、地価や物価の安さを考慮して、仕事の場所を都市から地方に移す人が増えることが予想されます。実際、都内の企業が、千葉県の南房総の中古住宅に注目し、リモートワーク(遠隔地勤務)の拠点として購入するケースが増えたことや、地方への移住に興味を持つワーカーも増えています。
 そこでスポーツの出番です。今後、断続的な移動制限を前提としたライフスタイルで重要となるのが、仕事と遊びの「均衡」です。都会の会社勤めの場合、自宅から会社まで、電車や徒歩で移動し、職場で仲間とコミュニケーションを取り、足を使った営業や外回りでエネルギーを消費することができましたが、地方分散が進む中で増えるテレワーク(在宅勤務)では、通勤時間や子どもの送り迎え等の時間が節約できる一方、生活のリズムや健康維持のための身体活動やレジャーがことさら重要となります。よって地方都市にこそ、まちなかに「遊ぶ、歩く、走る、投げる、打つ、競う、呼吸する、汗を流す、交わる(集う)、興奮する、爽快感を得る、リラックスする、休息する、といったスポーツにまつわる身体文化との多彩な関係を生み出す仕組みや装置」(スポーツ都市戦略:学芸出版)が必要になるのです。今後、テレワークやワーケーション(ワーク+バケーション)の拠点となる地方にこそ、野球場やサッカー場、そして公共体育館やフィットネスクラブとともに、安全に自転車に乗れる専用レーンや、散歩が楽しめる小径やフットパス、そしてコミュニティ形成に必要な地域スポーツクラブ等の機能が求められるでしょう。

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