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アクティブシティに必要な空間デザイン(前編)


 アクティブシティには、思わず歩きたくなる空間のデザインが必要です。多様な都市空間の風景が連続してつながることで、歩きながら変化する風景や街並みを楽しみながら、長い距離をストレスなく移動することができます。このような一連の繋がりは「シークエンス」(sequence)と呼ばれますが、歩行者が好む風景が続く動線や、道路、公園、河川、港湾など、異なる公共空間がつながり、どこを歩こうかという複数の選択肢が準備されていることも大切です。
 さらに建物や空間に入りやすく、アクセスが簡単な「パーミアブル」な都市空間も重要になってきます。パーミアビリティ(permeability)とは「浸透性が高い」ことを意味し、建物と街路が一体となったオープンカフェや、透明性が高く見通しが良い空間、そして自然と腰掛けたくなるような公園のベンチや、そして歩きたくなるような水辺の空間などを意味しますが、いずれも、ウォーカブル(歩きやすい)なまちづくりには重要な概念です。そこで今回は、歩行者志向の空間デザインの視点から、アクティブシティの可能性について考えてみましょう。
 
ヒューマンスケールな空間構成
 アクティブシティには、歩きやすく、活動しやすい都市空間が必要ですが、そのためには、人が歩き、活動することが可能な「範囲」を意識したまちづくりが必要となります。「人間の街」の著者であるヤンゲールは、「歩行者は時速5km、自転車は時速18km、そして車は時速60km」で移動するため、それぞれのスケールに合わせた街の計画が重要である」と指摘する一方、「多くの人が抵抗なくあるくことができる距離は500m」とし、「100メートルのあいだに15-20店舗が並ぶと、歩行者は4-5秒ごとに新しい体験をすることができる」と言っています。
 では心地よく歩き回ることができる、人間の感覚に合ったヒューマンスケールな空間構成とはどのようなものでしょうか?巨大な建築物が行く手を阻み、前方が見通せないまちや、街区と街区の間の距離が長く、交差点を渡ることが億劫になったりすると、歩行者の歩こうという気持ちが萎えてしまいます。できるだけ短い距離で次の通りに出くわすような歩行者空間ネットワークを用意することで、経路の選択肢を増やして、まちに入り込みやすい(パーミアブルな)街路構成となるようにすることが大切なのです。
 
必要とされるある程度の人口密度
 アクティブシティには、ある程度の人口密度が必要です。例えば人口密度が低い中山間地域は、自然が豊かな分、商業集積がないため、人の移動は車が中心となる。田舎に行くほど人は歩かず、車社会となる。厚生労働省が2017年9月21日に発表した「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、男性(20歳〜64歳)の1日平均歩数は、最も多い大阪が8762歩で、最も少ない高知が5647歩でした。ちなみに東京は8611歩で全国4位です。車の保有台数については、東京が全国最低の0.42台で(大阪は0.63台)で、高知県は1.13台でした。最も世帯あたりの保有台数が多いのは福井県で、1世帯あたり1.72台とほぼ2台に近い値です。
 日本の130市町村を対象とした分析でも、人口密度の高い市町村ほど、また市街化区域内の方が区域外よりも平均歩行時間が長い傾向にありました。よって土地利用が多様で、徒歩圏内に店舗や公園等があると、それらが目的地となって歩行が促されます。そのためには、ある程度の人口密度と商業集積があることが望ましいのです。


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