『アタック・オブ・ライスケイクス』

とある惑星に、とある生物がいた。個体数が飽和してしまった「彼ら」は、別の星に住処を探さなければならない。いわゆる寄生生物の特徴を持っている彼らは、身体を乗っ取り支配する計画で、チキュウという惑星にやってきた。この惑星には約80億近い数のニンゲンという生物がおり、彼らを乗っ取れば惑星全土が支配できることを知った。

まず国土が大きくかつ孤立している場所を乗っ取り、そこで人口を増やし、世界の過半数以上の人口を占めてから武力により世界を征服するという計画だ。そのために、まず南半球にある大きな大陸国をターゲットに決めた。

しかし、計画は上手くいかなかった。というのも、彼らの寄生方法は「白くて硬い食品に擬態し、それを食べた生物が一度窒息死することにより体を乗っ取れる」というものだったからだ。どうやらその国には白くて硬い食べ物はないようだった。

次に、大きな大陸の近くの細長い島国に侵略することに決めた。というのも、研究の結果その国には”モチ”という白くて硬い食品があることが分かったからだ。早速、モチが盛んに食べられるショウガツという時期を狙って大規模な侵攻を開始した。

計画は大成功。町中には寄生されたニンゲンが溢れかえっていた。しかし、彼らは重大なことに気付く。「この国、子供を作れない年寄りばかりじゃないか!」そう、元々高齢者の数が圧倒的に多いだけでなく、モチは若者には人気がなく、また窒息死するのもほとんどが高齢者だったがゆえ、彼らはほとんど高齢者にしか寄生できなかったのである。このままだと世界征服はおろか、この国を征服する前に高齢者の短い寿命で死んでしまう。

ゆえに彼らはこの国の若いニンゲンたちを懐柔し、寄生高齢者と若いニンゲンたちで、一つの国家として他国を攻撃することに決める。若いニンゲンたちを説得するのは全く難しくなかった。というのも、この国は少子高齢化にあり、またこの国のセンキョというシステムは、数の多い高齢者たちの意見が通るものだったからだ。

しかし、現在の1億人程度の人口のままだと世界を武力では征服できない。人口を増やすためには若いニンゲンたちに繁殖をしてもらわなければならず、そのためにも彼らは若いニンゲンたちを裕福にする制度に力を入れることに決める。

あいにくこの国にはお金がなかったので、彼らの惑星のありあまる資源を持ってきて資金にした。子供を一人産んだら5000万円支給、教育費は大学まで無料、若者の賃金爆上げ企業の支援などの政策により、一世帯当たり平均10人の子供を持つようになった。そして大幅な経済成長を遂げ、豊かさに憧れた他国からの若者の移民が急増し、結果的に全世界の若者の半分近くが一国に集まることに。人口は30年ほどで20億人近くになった。こうして世界情勢は、寄生高齢者と全世界の半分の若者からなる超大国シン・ニホンが覇権を握ることとなる。

しかし、ここまでの変化は彼らにとっても予想外で、自分たちよりも数が大幅に増えてしまった若者たちに対して他国への軍事侵攻を説けなくなってしまった。苦渋の決断の末、彼らは秘密裏に若者の代表へ、「今後も資源を提供し続けるから寄生していない姿で共生をしていきたい」という旨を伝える。若者たちは快く承諾する。

シン・ニホンの国土だけでは人口密度が高まりすぎたため、移民の若者たちは、彼らとともに大量の資源をもって祖国へと帰っていく。こうして全世界が裕福になり、人類史ではじめて世界平和が達成された。

また、救世主として彼らの歴史が学ばれるとともにニホン国のモチが世界中に知られることとなり、その独特の食感から、全世界で愛されることになった。

ちなみに、年10万件くらい、彼らとモチの食べ間違いが発生しているらしい。


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