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ワンス・アポン・ア・タイムinダイアリー 2

2、夏休み

 幼馴染の直樹のおばあちゃんは、瀬戸内海に浮かぶ小さな島の出身で、毎年夏休みになるとその島に遊びに行っていました。
 小さい頃から家族ぐるみの付き合いだった僕達は皆で一緒になって、親戚がやっているという民宿に二泊三日くらいで泊まって、海で泳いだり浜辺でBBQをしたりしました。

 それが小学校3年生くらいになった時から、お前らだけで行ってみろよ、となって僕と直樹の二人だけで電車と船を乗り継いで行って、一週間くらい滞在するようになっていました。
 民宿は、直樹のおばあちゃんの弟家族が経営していて、日に焼けて引き締まった体の爺さんは、朝早くから船に乗って魚をとりに漁に出かけて、そのとれたての魚を民宿の食事で出してくれているのでした。

 僕たちは毎朝6時に起きて地元の子達とラジオ体操に行き、朝ご飯を食べると9時までは宿題をして、そのあとは日が暮れるまで島中を遊び回るという生活をしていました。
 海で泳いだり、おじさんや地元の子に釣りを教えてもらったり、虫をとったり、ゲームをしたりとやることはいくらでもあって、僕たちは島生活を満喫していました。
 特に海は透きとおっていてとてもきれいで、けっこう深いところに行っても海底の白い砂地が見えているので、僕らはシュノーケルを貸してもらって魚を追いかけまわしていました。ときどき30cmはあろうかという大きな魚が僕たちの下を通り抜けたりして、何とか捕まえて晩飯にできないかと手を伸ばすのですが、とても追いつけないようなスピードでビヒュンと逃げて行ってしまうのでした。

 最高の遊び場で遊び倒してきた僕たちは、肌を真っ黒に日焼けさせて家に帰ると、両親や直樹の妹の由紀ちゃんに島での楽しかった出来事を逐一話して聞かせました。
 釣り対決は僕の方がデカい魚を釣ったとか、泳ぎは俺の方が速かったとか、地元の子がタコを捕まえたとか話はつきませんでした。
 由紀ちゃんは目をキラキラさせて話を聞いていて、「いいなあ。来年は私も絶対行く!」と鼻息をあらくしていましたが、直樹は「女に冒険はムリだよ。家でままごとでもしとけ。」ととりあいませんでした。
 「ねえ隆兄ちゃんはいいでしょう?」と由紀ちゃんは大きな瞳でウルウルとこちらを見つめてくるので、「おじさんに聞いてみて、OKがでたら来年は一緒に行けるよ。」と僕が答えると、「直樹兄ちゃんは嫌いだけど、隆兄ちゃんは大好き。」とキラキラと笑っていて、僕がデレデレしていると直樹が僕たちの間に割って入ってきて「お前には妹はやらん!」と偉そうに言ってきたので、僕たちは吹き出して笑ってしまいました。

 由紀ちゃんは家に帰るとさっそく来年は一緒に島に行きたいと話して、娘に弱いおじさんはコロッとOKをだしてくれたので、翌年からは僕らは3人で島に行くことになりました。

つづく

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