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ワンス・アポン・ア・タイムinダイアリー 13

13、脱ニート

 父親による鬼しごきが始まり、毎朝4時に叩き起こされるようになった僕たちは1時間のランニングをした後は、腹筋背筋腕立て伏せスクワットなどの筋トレのメニューを課されるようになりました。
 8年も引きこもり生活をしていたため、僕も直樹も体力はほぼゼロで、走り出して数分で息があがって足がもつれていましたが、後ろから父親に引っ叩かれ叱咤されて足を止めることは許されず、どうにかこうにか初日のメニューをこなした後には公園の地面の上にヘタリこんで一歩も動けなくなってしまいました。
 7時になると、「じゃあ俺は仕事だから。」と父親は帰って行ってしまいましたが、僕たち二人はしばらく動き出す気力もなく、そのまま公園に転がっていました。
 やがて学校の登校時間になり、近所の小学生達が公園の前の道を通りだし、僕たちの方を見て「なんだありゃ。」と指さして笑っていましたが、朝っぱらからデブ二人が公園の地面に転がっているのですから、笑うしかないでしょう。
 自販機でジュースでも買うかと思いましたが1円も持っておらず、仕方なく公園の水道をガブガブと飲みましたが、公園の水なんて飲んだのはほんとに小学生の時以来でした。

「なあ、これ明日もやるのかな?」

直樹が不安げに聞いてきましたが、僕も明日を迎えるのが怖くなっていました。

「たぶん明日も。というかこの先ずっとかも。」

僕が言うと直樹は怒って、

「ふざけんなよ!俺関係ないじゃん。だいたい俺がイジメにあったのだってお前がいらんことするから!」

と掴みかかってきたので、僕も反撃しましたが体力ゼロのデブ二人が喧嘩したところでどうこうなるわけもなく、押し合いへしあいした結果二人してドテっと転んでしまいました。

「アホらしっ。疲れたからもう帰ろう。じゃあな。」

と言って家に帰り、シャワーを浴びてベッドに倒れ込むと泥のように眠ってしまいました。

 翌日はひどい筋肉痛で腕も足も上がらす、歩くのも億劫なほどでしたが、それでも父親は容赦なく僕たちにトレーニングを課してきたのでした。
 そんなことが一週間も続いて、ようやくちょっとは慣れてマシになったかなという頃、トレーニングが終わると父親がにこやかに言いました。

「お前らに仕事を見つけてきてやったぞ。知り合いのスーパーの野菜部門でバイト募集してたから、そこで働かせてもらえるよう頼んどいたから。この後7時から行ってこい。」

 僕らは「うげっ。」と声を合わせ、僕は「こんなクタクタなのにこっから働けないよ。」と言い、直樹も「もう勘弁してくださいよ。」と涙目でしたが、

「ちなみに青果担当の社員、元アッチの奴で小指ないから、文句あるんだったら言ってみるといいぞ。わざと遅刻してみても面白いことになりそうだな。」

と、人差し指で頬に傷をつける仕草をして笑っていました。


つづく


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