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耐震性能評価計算法(限界耐力計算法)木造

限界耐力計算法で、耐震性能評価をする。

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木造住宅は耐震壁による壁式構造であり、地震時水平力に対して耐力壁だけで抵抗すると考える。「筋違い耐力壁」と「構造用合板耐力壁」の2種類あるが、耐震性能評価法は共通であり、本例と同じ。降伏変形角、安全限界変形角などの仮定は、耐力壁の水平加力試験及び実大建物試験による実験データに基づいている。地震エネルギー吸収効果は、各層の変形が地震時に同程度となる「全体降伏機構」を前提としている。尚、木材自体が損傷する場合はほとんど塑性変形は示さない。従って、塑性変形が期待出来る損傷部分は、引張鉄筋筋違いや釘やボルトなどの接合金物部分が対象となる。ただし、木材のめりこみや、貫を用いた接合部分は塑性変形が期待できる。又、「偏心率」に問題がないことも、この耐震評価法を用いる重要な前提条件となる。

①■地震力算定用の建物荷重W:階高を2分した重さを全階とも1.5KN/㎡とする。(重い瓦の場合は最上階を3KN/㎡)W=350KN

  3F(30㎡),2F(50㎡),1F(70㎡)の場合、R階:1.5×30㎡=45≒50KN、3階:1.5×30㎡+1.5×50㎡=120KN、2階:1.5×50㎡+1.5×70㎡=180KN

②■これ以上耐力が上がらない 保有水平耐力Qu=2.9×α×L:(金物損傷、めりこみ)

  Qu=1.96×(α:壁倍率)×(1.5:終局耐力までの余裕)×(L:耐力壁の総長さ)
  X方向、壁倍率α=4、耐力壁l=13mの時、2.9×4×13=150、Qu=150KN
  Y方向、壁倍率α=4、耐力壁l=15mの時、2.9×4×15=170、Qu=170KN
 □保有水平耐力時、層間変形角θ=1/30と変位δu=h/30
  木造住宅の大地震時の層間変形角θ=1/30と設定する。(C0=0.25と仮定) θ=δ/hなので、δ=θh→δu=h/30
  軒高h=8.4mの時、δ=8.4/30、δu=0.28m
※木造建築物の安全限界変位を1/15に設定した場合(C0=0.25~0.3程度必要)、大地震時の損傷(大破)が10%に収まる(京都の考え方)
 □保有水平耐力時、固有周期Tu=2π√(Mu・δu/Qu)
  多質点系を1質点系に置換する。1質点系の有効質量Mu=建物重量×80%とする。尚、質量表示に変換(KN→t)
  有効質量Mu=350×80%=280KN、更に質量に変換 280KN→Mu=28t
  Tu=2×3.14×√(28×0.28/150)=1.4秒、Tu=1.4秒

③■骨組損傷開始時の降伏強度 地震力Qy=建物重量W×Co

  Co=0.25(250gal)程度で骨組みが損傷(降伏)すると仮定。標準剪断力係数Co=0.25=地震力Qy/建物重量W
  Qy=350×0.25=88、Qy=88KNで損傷が始まる。
 □損傷開始時、層間変形角θ=1/120と変位δy
  木造住宅の降伏強度Qyでの損傷時の層間変形角θ=1/120とする。(C0=0.25と仮定) θ=δ/hなので、δ=θh→δy=h/120
  軒高h=8.4mの時、δ=8.4/120、δy=0.07m

④■地震加速度の低減率Fh=1.5/(1+10h)

  地震エネルギーの吸収効果は、損傷程度Df、及び減衰定数hから求められる、地震加速度の低減率Fhとして評価される。
 □骨組みの塑性損傷程度Df=δu/δy×Qy/Qu
  X方向、Df=0.28/0.07×88/150≒2.3、Df≒2.3
  Y方向、Df=0.28/0.07×88/170≒2.1、Df≒2.1
 □減衰定数h=0.2(1-1/√Df)+0.05(木造は強度にばらつきがあるので0.2とする)
  X方向、h=0.2(1-1/√2.3)+0.05≒0.12、h≒0.12
  Y方向、h=0.2(1-1/√2.1)+0.05≒0.11、h≒0.11
  →低減率Fh=1.5/(1+10h)
  X方向、Fh=1.5/(1+10×0.12)=0.68、Fh=0.68(68%)←これが知りたかった!
  Y方向、Fh=1.5/(1+10×0.11)=0.71、Fh=0.71(71%)←これが知りたかった!
  ※京都の町並み(hを一発で出す方法)
   h=0.2(1-1/√100R)+0.05の式。R=1/30とすれば、h=0.14となり、Fh=1.5/(1+10×0.14)=1.5/2.4=0.63、Fh=0.63(63%)

⑤■大地震時に骨組みに作用する地震加重Pi=Gs×mi(質量)×α×Bsi×Fh×Z 

(Bsiは、R階1.0、3階0.8、2階0.6とする)
 □地震加速度応答スペクトルを用い、建物周期Tuより応答加速度αを算出
  Tu<0.16秒の時、加速度α=(3.2+30Tu)、0.16秒<Tu<0.64秒の時、加速度α=8m/s2、0.64秒<Tuの時、加速度α=5.12/Tu
  Tu=1.4秒>0.64秒なので、α=5.12/1.4=3.66、α=3.66m/s2
 □表層地盤による加速度増幅率Gsを2.1倍とする。(2種地盤で1.5~2.025)
  X方向、R階:PR=2.1×5t×3.66m/s2×1.0×0.68×1=26.13、PR≒27KN
  Y方向、R階:PR=2.1×5t×3.66m/s2×1.0×0.71×1=27.29、PR≒28KN
  X方向、3階:P3=2.1×12t×3.66m/s2×0.8×0.68×1=50.17、P3≒51KN
  Y方向、3階:P3=2.1×12t×3.66m/s2×0.8×0.71×1=52.38、P3≒53KN
  X方向、2階:P2=2.1×18t×3.66m/s2×0.6×0.68×1=56.44、P2≒57KN
  Y方向、2階:P2=2.1×18t×3.66m/s2×0.6×0.71×1=58.90、P2≒59KN

⑥■必要保有水平耐力Qun(1階の層剪断力をQunとする)

  大地震時の水平荷重によって各層には層剪断力が生じる。その層剪断力Qiにつり合う剪断耐力が必要保有水平耐力Qunである。
  X方向、1階の層剪断力Qun=27+51+57=135、Qun=135KN
  Y方向、1階の層剪断力Qun=28+53+59=140、Qun=140KN
  ※有効質量Mu用い、Qunを一発で出す方法。Mu=0.8Mall=28t、α=5.12/Tu=5.12/1.4=3.66m/s2、Fh=0.68。Qun=2.1×Mu×α×Fh=2.1×28t×3.66×0.68=146KN

⑦■必要値Qun<保有値Qnの確認

  X方向、必要値Qun=135KN<保有値Qu=150KN  OK!
  Y方向、必要値Qun=140KN<保有値Qu=170KN  OK!

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