Happy Women's Map 長崎県長崎市 日本初の女性産科医 楠本 イネ 女史 / First Japanese Female Obstetrician, Ms. Ine Kusumoto
「女ながらも一家を興し、名を末の世に残そう」
"Create a wonderful family and leave a lasting name for future generations, even as a woman."
楠本 イネ 女史
Ms. Ine Kusumoto
1823 - 1903
長崎県長崎市銅座町 生誕
Born in Nagasaki-city, Nagasaki-ken
楠本イネ女史は日本人女性初の産科医です。父親であるドイツ人医師シーボルトの弟子達はじめオランダの最先端の医師のもとで積極的に医術を修業して宮内省御用掛の医師となりました。
Ms. Ine Kusumoto was the first Japanese female obstetrician. Disciples of her father, Dr. Philipp Franz von Siebold, a German physician, including those from the forefront of Dutch medicine, actively trained under their guidance and became physicians employed by the Imperial Household Agency.
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「シーボルトの娘」
イネはドイツ人医師フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトと、長崎丸山町遊女たきとの間に生まれます。父・シーボルトはイネが2歳の時に国外追放となります。イネは幼少時は虚弱体質ながらも男勝りで明朗快活、学問を好んで5歳頃から寺子屋に通って日夜勉学に耽ります。心配する母・タキはしばしば勉学を禁じて、イネに三味線・踊りなど芸事を身に付けさせようとします。「混血児の⾃分は普通の娘としては⽣きていけない。何としても父上の家業を継いで天下晴れて立身出世して、女ながらも一家を興して名を末の世に残そう。」父親が残した学術書などを元に、勉学に明け暮れます。母・タキはシーボルトの信頼する門人である四国宇和島藩の二宮敬作にイネの養育を託します。イネは14歳から約５年間を二宮敬作のもとで蘭学と医学の基礎を懸命に学びます。
「産科女医」
当時の日本ではお産は汚らわしいものとして不衛生な小屋で隔離され妊婦や新生児の死亡率は高く、男性医師の診察を嫌って治療が手遅れになった妊婦をたくさん診たイネは産科医を志すようになります。二宮敬作の紹介により、岡山藩で産科を開業しているシーボルトの門人・石井宗謙に弟子入りします。ところが、娘の様子を見に来た母たきを見送って帰る船の中で石井宗謙に強姦されて妊娠したイネは、失意と傷心のうちに24歳で娘・たかと共に郷里に戻ります。長崎で産科医院を開いて評判となるも、阿部魯庵に師事して産科の研究を重ね、岩国藩の大村益次郎からオランダ語を学び、2年後には娘・たかを母たきに預け再び二宮敬作の下で蘭学・産科・内科の修行を再開します。3年後、二宮敬作とその甥・三瀬周三と共に郷里に戻り医者として開業します。まもなく長男アレキサンダーを連れて再来日した父シーボルトと郷里で再会を喜びつつ同居しながら医学を学びます。しかしながら、シーボルトは母お滝・イネが雇った家政婦シオとの間に子をもうけ、イネは深く失望して家を出ます。
「宮内省御⽤掛女医」
イネは長崎奉行所西役所医学伝習所でオランダ海軍の軍医ヨハネス・ポンペ・ファン・メーデルフォールト、アントニウス・フランシスクス・ボードウィン、コンスタント・ゲオルグ・ファン・マンスフェルトから最新の産科・病理学を学びます。46人の男性に交じって腑分け（死体解剖実習）にただ一人の女医として臨みます。父・シーボルトの帰国後、母たきが亡くなると、異母弟のシーボルト兄弟（兄アレクサンダー・フォン・シーボルト、弟ハインリヒ・フォン・シーボルト）の支援を得て明治政府の高官や皇室にも知己を得ながら43才で東京築地で産科を開業、大評判となります。さらにイネの門下生・今泉釖の義弟である福澤諭吉の口添えにより宮内省御用掛となり、明治天皇の女官で側室の葉室光子の第一皇子の出産に立ち会る名誉に預かります。1875年に医術開業試験が始まるも男子のみに限定され、イネは東京の医院を閉鎖して郷里で産婆院を開いて晩年まで産科の発展に貢献します。
-シーボルト記念館 Siebold Memorial Museum
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