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感想&メモ『死に至る病~あなたを蝕む愛着障害の脅威~』 by 岡田尊司

おすすめ本の感想と要点メモです。
特におすすめなのは、赤ちゃんを育てる親、心の病と向き合うあなたです。

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■感想■ 
親から離された子ザルは、栄養や室温に配慮して育ててもほぼみんな死んでしまう、というハーロウの気付き等を経て子供の安定した愛着を育むには、「安全基地」となる必要があり、「安全基地」となるためには「ほどよい応答性」+「共感性」が必要と言うのは、具体的で理解しやすかった。 また、宗教や伝統的な倫理が衰退し個人主義が拡大するに伴い、愛着障害者の数も拡大している点や様々な背景を列挙したうえで、個人にはどうしようもないことまで責めを負わせ努力と責任を強いることに、死に至る病を生む本当の理由があるように思う、との著者の主張が腹に落ちた。

■要点メモ (ほぼ引用)■
■愛着・・・生命を繋ぐ仕組み

ルネ・スピッツ
・第二次世界大戦のころ、養護施設では職員たちは熱心に子供の世話をしていたが母親を失った絶望を癒すことができず、子供によっては生命力が目立って低下し、病気への抵抗力も弱まった。発達指数も通常の100に対し、72しかなかった。一方、刑務所付属の乳児院の赤ん坊は一歳になると外の施設に移されるが、それまでは好奇心旺盛で、しゃべりだす子や歩き出す子もいた。発達指数は一般家庭と同じ105だった。
・スピッツは、子供たちの問題を「ホスピタリズム(施設病)」と呼び、機械的な世話が中心で情緒的な交流が不足する結果、生じる悲劇だと考えた。
ボウルビィ
・戦後、WHOの依頼で戦災孤児の調査を実施。余人ではなく、母親による世話に重要な意味があるらしいことを、より打ち出した。 → 学会からは嘲笑
ハリー・ハーロウ
・親から離された子ザルは、栄養や室温に配慮して育てても(ほぼ)みんな死んでしまう。生き残っても、落ち着きがなく同じ行動を繰り返したり重い障害を抱えたりして実験に使える状態には育たなかった。
・子ザルが布切れにしがみつき、離されるとパニックになることに気付く。布きれを巻いた人形を入れてみると子ザルは一日中掴まって過ごし状態は安定し健康面や発達も良くなった。また、子ザルの動きに反応して人形が揺れるようにすると子ザルはさらに元気になり、発達面も良くなった。とは言っても、母ザルに育てられた子ザルに比べると、明らかに発達が悪く社会性も身につけられなかった。
愛着安定な子 = 母親が子供にいつも細心の注意を払い、助けを求められるとすぐ駆け寄って子供を抱き寄せる。
愛着不安定な子 = 母親が上記の反応はあまり起こさず、子供が泣いてても冷ややかであったり、気まぐれに態度が変わったりした。
愛着が不安定
  →オキシトシンがうまく働かない
  →ストレスを感じやすい
   →幸福度が低下しストレスホルモンの分泌が亢進 
    →心身の病気になりやすい

■「安全基地」が安定した愛着を育む   
安全基地」=「ほどよい応答性」+「共感性
・応答性は、低めのハードル(簡単にできる)
 ・毎回応答する必要はない。ほどよい頻度で応答。
・共感性は、相手の立場や意図を感じ取る能力
 ・側面①:情緒的共感性。気持ちを共有し同調するもの
 ・側面②:認知的共感性。相手の気持ちや意図を正確に理解する能力。→ 愛着安定化のキー
 → 子供が求めたら応える、という安定した応答性が安定した愛着を育む。
 → 母親が安全基地として機能している時、子供は情緒的に安定する
  だけでなく 外界に好奇心を向け、積極的に探検しようとした。
・子供と安定した愛着を形成するための臨界期には2つある。
 ①生まれてから数時間:
 ②6か月~1年半
・愛着を脅かす要因は、虐待、ネグレクト、養育者の交代。

■愛着障害が近年増加した背景
・昔から愛着障害はあったが、それらの子は成人するまでに大部分が亡くなっていた。1900年の米国の都市部で1歳になるまでの死亡率は、一般家庭:30%、孤児院:80%。1960年代から、境界性パーソナリティー障害や摂食障害、ADHDが目立つようになる。その20~30年後には爆発的に増加。これらの障害は不安定な愛着と強い結びつきを示す。
1950年代以降、女性の職場進出が米国では進んだ。
・6~17歳の子供を持つ女性で就業しているのは、1940年代後半:25%、1980年:60%。ネグレクトのリスク増加。
・母子が離れ離れになる時間があまりに早かったり、あまりに長時間だったりすると、愛着が不安定になりやすい。
・母乳を吸われると、オキシトシンの分泌が促進される。
 → 母親の職場進出で、離乳の時期が早まった。
・離婚率が、米国では、1960年から急増し、1980年以降高止まりしている。
 → 養育者の変更草加
・子供を愛せない親の急増・・・愛着障害の人が抱える困難。
 ・背景①:ありのままの自分が愛されなかった。
      自分さえ愛せないのに子供なんか愛せる自信がない。
 ・背景②:世話をする機会(時間)の不足。
      愛着は世話をすることで育まれる。
 ・背景③:理想を求めすぎてしまう。
宗教や伝統的な倫理の衰退
 ・無宗教の人が米国では、1960年頃:2%、1980年:7%、2010年:14%、
  2018年:20%。親のいない子や、愛されない子にとって、
  等しく神の愛が注がれるという信仰は欠落を補う強力な装置だった。

■『死に至る病』の著者:キルケゴール
・個人主義をさらに突き進めた実存主義の先駆的思想家。
・絶望を神の問題としてではなく、個々の人間の心理的な問題として捉えようとした。つまり、神や世界に対して絶望しているのは、自分自身に対して絶望しているためと視点を逆転させた。個人主義が興隆を迎える時代において、つまり、神や世界に対して絶望しているのは、自分自身に対して絶望しているためと視点を逆転させた。個人主義が興隆を迎える時代において個人の主体的関与や、努力の重要性を説く思想で評価された。
・絶望の3つのタイプ
 ①絶望しているが、自覚していないタイプ
 ②絶望を自覚しているが、自分から逃れようとするタイプ
 ③絶望を自覚しているが、自分であろうとするタイプ

■個人主義と絶望
・母親に愛情を与えられなかった子供が、自分に絶望する場合、個人にはどうしようもないことまで 責めを負わせ、努力と責任を強いること、そこにこそ死に至る病を生む本当の理由が あるように思う。
・自分に与えられた運命の前に個人はあまりに無力で、受け身な存在で、個人が変えていけることは あまりに限られている。にもかかわらず、自ら変えていこうとしないのは罪だといわれては絶望してしまう。

■補足情報(WikipediaなどWebから転記)■
愛着理論
・「愛着」とは精神科医ボウルビィが提唱した概念で、「特定の人に対する情緒的なきずな」のこと。
・愛着スタイルは、その人の根底で、対人関係だけでなく、感情や認知、行動に幅広く影響している。 パーソナリティを形作る重要なベースとなっているのである。(岡田氏)
・子供の愛着行動の4スタイル’(エインスワース等)
 ①安全
 ②不安回避
 ③抵抗 (不安両面感情)
 ④無秩序(混乱)
愛着障害  
・「甘える」や「誰かを信頼する」などの経験値が極端に低いため、自分に向けられる愛情や好意に対しての応答が、怒りや無関心となってしまう状態。 様々な言葉の定義が存在する。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。ぜひ本書を読んでみてください。


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