アルバート坊やの話
アルバート坊やの話
どこかで、こんな方法を聞いたことがあるかもしれない
ワンワン吠えてたら、いたずらしてたら
バン!!と大きな音を出す
そうすると、一瞬ストップさせることができるのは単純に
”大きな音に驚いた”からです
しかし私たちは絶対に、この方法を使いません
なぜなら・・・
これには大きな副作用があり
問題行動が悪化する可能性があるからです
その話をする前に、20世器初頭に行われた実験のことを書きましょう
初めに言っておくと、大昔の研究で倫理的に問題があるので、
現在ではこのような手法で実験・研究することはNGになっていますのでご了承ください
①実験について
ワトソンとレイナーという研究者が
アルバートという人の赤ちゃんに行った実験。まずアルバート坊やに
①白ネズミ
②ウサギ
③イヌ
④毛のついていないお面
⑤脱脂綿
⑥燃えている新聞紙
を見せたところ、全く恐怖反応を示すことはなかった
次に
鉄棒をハンマーで叩いて大きな音を出したら、泣き出した
大きな音が恐怖反応を示すことが確認できた
そして
白ネズミを見せてから、アルバート坊やの背後で鉄棒をハンマーで叩く
ことを何度か繰り返した
白ネズミが現れる→大きな音
そうすると、アルバート坊やは白ネズミを恐れるようになった
そして・・・
◯ウサギ
◯イヌ
◯毛皮のコート
◯毛のついたお面
◯脱脂綿
などにも恐怖反応を示すようになった
それから1ヶ月以上経ってから
またテストをしたときも、同じように恐怖反応が引き起こされた
という血も涙もない実験です
つまり恐怖は広がりを見せて、持続されるということです
その後ワトソンの弟子のジョーンズさんが
恐怖反応の改善方法を編み出してくれたので、現在は人の世界でも幅広く使われていてワンコにも応用が出来るので、皆さんのお役にとってもたっているのですけどね。
アルバート坊やの実験では
白ウサギ→鉄棒をハンマーで叩く。そうすると
◯白いフワフワしたもの
◯毛のついた何か
という、違うものにも恐怖を感じるようになった
広がりを見せたわけです
これ研究だから、検証しやすいように
見せるものを白ウサギと限定しているので
これで済んでいるわけで
②何が起きるのか考えてみましょう
ワンコが何かした時に、大きな音を出して行動をストップさせた
その時、ワンコは
何を見ていて、何を聞いていて、何の匂いを感じている?
日常は実験室ではないから、無数の情報が溢れていて
少なくとも、大きな音にはビックリしているよね
テーブルを叩けば、ドン!と中低音の音が鳴る
そうすると生活音で、似たような音に恐怖反応を示す可能性が出てくる
その音が聞こえたときワンコが
◯見ていたものは?
◯感じていた匂いは?
◯その場所は?
◯近くにいた人や動物は?
もう限定すらできないほどです
何かに恐怖条件づけが起きたら、そこから枝分かれして
似たようなものにも恐怖を感じるようになる
どんどん広がりを見せていく
やばくないですか?
だから私たちは使わないんですよ
というお話です
ちなみに強い精神的ショックは
人でいう心的外傷ストレス障害(PTSD)となり、ワンコにはその名前はついていないと思いますが仕組みは同じです
今回は音でお話していますが、人がワザと大きな音を出さなくても
日常の中で大きな音が出てびっくりすることがありますよね
家の中で〜外から〜散歩中にトラックが〜
不可抗力で避けられないことも、日常ではたくさん
それ、どうすれば?
③予防をしておく
ベストアンサーは
"社会化学習をしっかりとやる"
つまり予防をしておくということです
「聴覚・視覚・触覚・嗅覚ありとあらゆる刺激に対してポジティブな経験を積み、悪い印象を持たないこと、自分にとって関係のないこと」
これが社会化学習です
ほいくえんで、色んなことを面白おかしくはやっていますが
これ、ただ遊んでいるわけでなく
やっていること全てに、たくさんの意味があります
強い恐怖は、たった1回の経験で条件づけられてしまいます
なぜなら、生き物は危険を察知できなければ生き残っていけないからです
これを改善しようすることに、とても大変な時間や作業が必要になることは、なんとなく想像がつくと思います
だからこそ社会化学習が、めちゃくちゃ大事だよー!
と何度も言っているのはそのためなんですね
そして問題行動の多くが、不安と恐怖がら原因となっているのですね
だからこそ経験値が浅く、社会化期の真っ最中な生後4ヶ月未満のワンコは出来るだけ早くほいくえんに来てほしいのです
それでも次から次へと積み重なる経験に追いつかないこともあったり、自宅へやってくる前に経験したことが尾を引きずることもあるし、やることは山ほど
そして、それ以降の月齢ワンコ・成犬には
まずは教室と私たちに対して、恐怖を感じないレベルに引き上げてからの入園にしているのも、このような理由からです
教室に来ること自体が恐怖だったら、そこでするお勉強は勉強ではなく、ただの恐怖体験になってしまうかもしれない
いま現在も数名の入園希望の飼い主さんに、何度も教室に足を運んで頂いて頑張ってくれています
こうやってワンコのことを考えて頂ける飼い主さんたちを全力でサポートしていきます😊
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