見出し画像

あの日君が代を歌えた世界線

※本投稿はフィクションです。

今年も雪虫と共に「あの季節」がやってきた。
なぜか年に2回も行われる儀式が始まる。組合の連中が反対し、私が一人賛成する。
校長からは君さえ従ってくれればと「交渉」を持ちかけられたが、「多数決には従う。私は賛成するだ。」と当てつけのように民主主義者を気取ってみせた。
年が明け再び会議が開かれる。組合員は反対し私は賛成する。民主主義的に物事は決まり斉唱は卒業式にプログラムされなかった。

しかし毎年のように続いたこの儀式も唐突に終わりを迎えることになる。
国旗国歌法が成立したからだ。あの会議も賛成多数で何事もなく終わってしまった。


1999年8月9日、「日の丸」、「君が代」をそれぞれ「国旗」、「国歌」と定める「国旗及び国歌に関する法律」(「国旗・国歌法」)が成立しました(公布・施行は8月13日)。この法律には、国家が特定の「国旗」「国歌」を定めることの意義、アジア・太平洋戦争での日本の侵略のシンボルであった「日の丸」「君が代」が日本国憲法のもとでの「国旗」「国歌」としてふさわしいのか、「君が代」の歌詞は国民主権原理をとる日本国憲法にふさわしいものであるのか、など、日本国憲法との整合性に関するいくつもの問題があります。また、制定にあたって、時間・内容とも十分な審議が行われたとは言えません。


http://www.jca.apc.org/~kenpoweb/special/no_coerce.html

かくして昭和の遺物は世紀を跨ぐ前に消え去ったはずだった。
今の学校に来て一年、遂に国家斉唱を見ることはなかった。この学校の卒業式プログラムは


「国歌」

だったのだからたまげてしまった。

幸か不幸か定年寸前の私は小学校担任である。手元にはオルガン、指はまだ動く。であればやることは一つだ。卒業式で国歌を歌えないであろう教え子に君が代を教えたのだった。
教え子達に未来があると願いながら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?