竹ノ内の楽しい免疫学入門(5)
さあ、反撃だ!:T細胞活性化
樹状細胞が外敵の情報を持って駆け込んでくるのは免疫系の司令本部リンパ節です。樹状細胞はリンパ管を通ってリンパ節にやってきますが、リンパ管は秘密の通路で、バクテリアが血管に入りこむ菌血症、敗血症になっても、バクテリアそのものがリンパ管を通ることはふつうありません。ただし、分解された可溶性の抗原が流れてくることはあります。これらの抗原とともに樹状細胞はリンパ管から「T細胞領域」というそれぞれ固有のTCRをもった様々なT細胞がひしめいている中に入り、MHCに抗原を乗せてマッチするTCRを持つT細胞を探してウロウロ動き回ります。同じ外来微生物由来の抗原を乗せていてもMHCが違うと見せ方が違うことは前に説明しました。T細胞の側は、レセプターは1種類、自分のTCRに合う抗原を生涯の敵として待ち構えているわけですが、提示されるMHC+抗原が1種類ではないので、理論上樹状細胞に呼応するT細胞は複数のcloneになっているはずです。さて、MHCに乗せた抗原のほかに樹状細胞は大事な情報をもう一つ出していました。「TLRからのシグナルを受けた」ために発した警報B7分子です。TLRは典型的な外敵のパターンに反応するレセプターでした。例えて言うとMHCにのる抗原の情報は、目の色とか鼻の形とか個人の特徴を示すもの、TLRからの刺激はその個人が拳銃をもっていたとかナイフを隠し持っていた、などの相手が危険である、ということを示すものになります。この二つの情報がそろって初めてT細胞は「いま侵入していたのは自分が探していた敵である」ということを知るのです。免疫学的にいうとTLRから刺激があった樹状細胞はB7.1/B7.2(CD80/CD86)という補助刺激分子を細胞上に発現します。T細胞の方はB7分子に親和性を持つCD28という分子をはじめから(=naïveT細胞の時から)発現しているのでMHC+抗原にTCRが結合し、なおかつCD28がB7分子に結合すると活性化して増殖を始めます。増殖したT細胞は一つの細胞に由来した同じTCRを持ったT細胞なので、この増殖をclone増殖といいます。
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