竹ノ内の楽しい免疫学(8)
反撃その2:自警団が軍隊に
病原微生物が侵入した末梢組織では、マクロファージがとどまって応戦していることは最初に説明しました。でも、マクロファージは、限られた数のレセプターしか持っていないので自分が貪食している相手が敵なのか味方なのか自信がないのです。例えていうと、町のお巡りさんは怪しい人に職務質問したり、酔っぱらいを留置したり、といった仕事をこなすには地域のことを知っていていいのですが、顔認証システムを駆使してテロを未然に防ぐ訓練は受けていない、といったところでしょうか。ですが、適切な指示を出してくれる指揮官がいれば、地域をよく知る正義漢はテロリストと戦うことだってできるのです。指令本部であるリンパ節に話を戻しましょう。活性化した樹状細胞はIFN-ɤ(インターフェロンガンマ)というサイトカインを出しT細胞の分化に直接関与することがあります。naïveT細胞にIFN-ɤが作用すると、Th1というサブタイプのT細胞になります。Th1はTh17より少し遅れて現れますが、Th17同様前線に出向いて指揮を執る細胞です。Th1は自身もIFN-ɤを分泌し、前線にいるマクロファージをたきつけて、貪食を促進します。マクロファージのレセプターの種類が増えたわけではないのですが、食べたものをMHCにのせてTh1に提示すれば、その場でTh1が「それはどんどん食べてもいいよ」とか、「それは自分の細胞だから食べないで」とか支持をしてくれるわけです。Th1が分泌するIFN-ɤはマクロファージの食欲を増進させる効果があるわけです。Th1は直接病原微生物を殺傷するわけではありませんが、現場のマクロファージの士気を上げることで病原体の排除に力を発揮します。若くて頑強な体を持った町のお巡りさん達(マクロファージ)は有能な指揮官(Th1細胞)のもとでは強い軍隊にもなるのです。
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