見出し画像

英語が苦手な医学生・研修医のための「これが英語でいえたらな」⑤ 薬の俗称と正式名称


さて、少し文法の話が続きましたので、今回は名詞のことを書きたいと思います。
私の大学では、医療面接英会話に挑戦しているのは医学部の3年生なので、英語よりも医学的な知識が足りなくて会話の内容が浅くなってしまうことの方が多いです。その中で、教員側はぜひ突っ込んで聞いてほしいのに、おざなりな質問で済まされてしまう事項の一つに、発症してから患者は何か薬を飲んだか、ということがあります。特に発熱、頭痛など感染症を疑わせる症状がある場合、子供ならともかく、大人が何もしないですぐ病院に来ることは珍しいでしょう。取り敢えず症状が取れないか解熱鎮痛薬を飲んでみるとか、以前に風邪で処方された抗生剤を飲んでみるとかしているものです。
ただの風邪ならそれで治まることもあるわけですから、一概に悪いこととは言えません。でも、診療する側は薬に対する反応を込みで現在の症状を評価しないといけませんから、いつ、何を飲んだかは是非詳しく聞いておいてほしいのです。
ところで、一般に薬局などで市販されている鎮痛解熱剤を我々はNASIDs(Non-Steroidal Anti-inflammatory Drugs: 非ステロイド性抗炎症薬)といいますね。アラキドン酸カスケードのCOXを阻害すると、鎮痛作用、解熱作用、抗炎症作用などプロスタグランジンの関わる様々な作用がでますので、医療者側にはそれらを一括りにできるNSAIDsという言い方は大変便利ですが、患者さんには通じませんね。患者さんが頭痛を一番苦痛に感じているようなら
Did you take a painkiller?" (鎮痛剤は飲みましたか?)
熱が高いことを気にしているのであれば
Did you take any fever-reducer?" (解熱剤を飲みましたか?)
と、患者さんが想起しやすく言い換えられる応用力があるといいですね。
もちろん、どちらのつもりで飲んでも解熱作用、鎮痛作用は両方あります。解熱鎮痛剤はふつう1日3回まで服用できることになっていますから、効果が続くのは大体8時間と考えて、いま熱が高くなかったとしても解熱剤の作用によるものだとしたらこれから熱が上がってくるか、上がるとしたらいつごろか、などを考えていきます。

もう一つ、感染症を疑うときに是非聞いておいてほしい薬は経口の抗生剤です。抗生剤:Antibioticsはドラッグストアなどでは買えないのですが、過去に処方された薬の飲み残しを飲んでいたりすることがあります。
こちらは症状そのものよりも、各種細菌培養検査に影響があります。血液培養などの培養検査は原因菌を特定し抗生剤の耐性などを調べて治療方針を決定する重要な検査ですが、検体を取る以前に抗生剤を飲んでいると起因菌を特定できるような培養結果が得られなくなります。無菌性(ウィルス性)の感染症なのか、起因菌を特定できない細菌感染なのか、判断は問診にかかっているのです。しつこく、正確に聞き出してほしいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?