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竹ノ内の楽しい免疫学入門⑥

備えあれば患いなし:Anergy
ところで、樹状細胞が補助分子を出していなかったら抗原を提示されたT細胞はどうなるのでしょうか。この場合でもMHC+抗原に反応するT細胞はいないわけではありません。でも、TLRからのシグナルがなかったというのは侵略者である確たる証拠がないということ、目の色や鼻の形が外国人っぽいだけの身内かもしれません。実際に貪食細胞は自己の細胞が死んだ場合、その死骸を食べて片付けることも仕事のうちなので、自己抗原を提示することもままあるのです。間違えて自分の組織をT細胞が敵とみなしてはいけないので、樹状細胞から補助分子の提示がない場合、その樹状細胞のMHC+抗原に親和性があるTCRをもつT細胞は不応 答(anergy)という状態になります。AnergyになったT細胞はMHC+抗原に結合することはできますが、いるだけで何もしません。何もしないならいなくてもいい、と考えがちですが、後々この何もしない細胞が重要な役割をはたすことになるのです。ただ、この話は少し複雑なのでまた後でゆっくり説明します。

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