見出し画像

ストーカー規制法

元警察官で、数回の転職を得て、現在はバス運転手をしている傍ら、講演講師として活動をしている者が、思ったことを書くつぶやきです。
私個人の見解であることをご理解の上、読んでいただけると幸いです。

東京都新宿区で、25歳の女性が殺害された事件で、ストーカーをしていた男が逮捕されました(簡潔に言ってます。事件の詳細はネットや新聞等で探してください)。
ネットでは被害者・被疑者について色々と言われているので、その点は今回触れないことにし、ストーカー規制法とは何か・ストーカー被害にあった場合どうすれば良いか等について説明して行きたいと思います。

ストーカー規制法等については、私の講演では触れていないので、こちらをご覧になってください!


ストーカー規制法とは

この法律では、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族等に対して行う以下のアからコを「つきまとい等又は位置情報無承諾取得等」と規定し、規制しています。

ア つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
イ 監視していると告げる行為
ウ 面会や交際の要求
エ 乱暴な言動
オ 無言電話、拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNSメ  ッセージ・文書等
カ 汚物等の送付
キ 名誉を傷つける
ク 性的しゅう恥心の侵害
ケ GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為
コ GPS機器等を取り付ける行為等

禁止命令とは?

禁止命令とは、「つきまとい等」行為があった場合に、これをした者が更に同じ行為を繰り返す恐れがある場合に、以降当該行為を禁止する命令です。禁止命令を出すのは都道府県公安員会で、被害者の申出又は職権で禁止命令を出すことが可能です。
禁止命令では、反復して当該行為をしてはならないことだけでなく、その実効性を担保するものとして、反復を防止するために必要な事項を命ずることも可能です。
もっとも、緊急の必要がある時は、聴聞せずに禁止命令を出すことが可能です。ただし、発令から15日以内に意見聴取を実施しなくてはなりません。
禁止命令の効力については発令から1年の期間が定められています。
ただし、必要があれば、1年ごとに延長することが認められています。

禁止命令に違反した場合は?

違反の態様に応じて3種類あります。
1 禁止後にストーカー行為をした場合
 禁止命令が出された後に、その命令で禁止された「つきまとい等」行為 を反復して行うことによって「ストーカー行為」をすると、2年以下又は200万円以下の罰金が科されます。

2 禁止前後の行為をあわせるとストーカー行為にあたる場合
 禁止命令が出された後に、その命令に違反して「つきまとい等」行為を行ったが、それ自体をとりあげると、未だ「ストーカー行為」に至らない場合があります。
例えば、命令後の「つきまとい等」行為は1回しか行われていないときです。しかし、この場合でも、禁止命令の原因となった「つきまとい等」行為と、命令後の「つきまとい等」行為を通じて評価すると、一連の反復したものとして「ストーカー行為」に該当する場合があります。
この場合は、やはり2年以下又は200万円以下の罰金が科されます。

3 ストーカー行為はないが、禁止命令には違反している場合
 禁止命令が出された後に、命令に違反する行為がおこなわれても、それが「ストーカー行為」には該当しない場合もあります。
 例えば、命令の原因となった行為と命令後の行為が、共に交際を要求する行為で、いずれも被害者は不安を覚えたものの、一般的見地からは、社会通念上、不安を覚えさせる方法とまで言えない行為態様だった場合は、「ストーカー行為」の要件を充たしません。

この場合は、「ストーカー行為」ではないので、禁止命令に違反している点だけを処罰するべく、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が定められています。
なお、「つきまとい等」行為により、被害者が不安を覚え、それが反復される恐れがある場合は、警察から、当該行為を反復してはならないという警告を発してもらうことができます。

ストーカー被害にあった時はどうすればいいのか?

ストーカー行為の被害に不安を覚えたら迷わず警察に相談して下さい。
被害がより深刻になる前に警察に相談して下さい。

警察に相談するとどうなるの?

警察は、相談者の申出に応じて、相手方にストーカー行為をやめるよう警告や禁止命令等の行政措置を行ったり、ストーカー規制法だけでなく、関係法令を駆使した加害者の検挙等による加害行為の防止、被害者等の保護措置等を行います。また、被害を防止するための援助として、次のような申出にも対応しています。

ストーカーを防止するための具体的な防犯対策を教えてほしい
被害防止交渉(話し合い)のため相手方への連絡をしてほしい
ストーカー行為等をした者の氏名等を教えてほしい
 など

このほか、ストーカー被害を防止するために、110番緊急通報登録システムへの登録やパトロールの強化など様々な措置を講じており、各市町村での住民票閲覧制限に関する支援対応等の対応も行っています。

今回の新宿の事件は…

被害者は3年前に警察に相談をしていました。
2021年3月 被害者110番通報
2022年3月 ストーカー行為終了 警察の対応終了
        のち被疑者が店とトラブル 出入り禁止に
2022年4月 被害者から2回目の110番通報
     5月 被疑者に書面で警告 ストーカー規制法で逮捕
     6月 入店など1年間禁止命令
    接触やトラブル等なし
2023年7月 被害者の継続希望なく、警察の対応終了
2024年5月8日 事件発生
という時系列であります。

警察の対応に問題はなかったのか?

被害者が亡くなってしまったのは残念な結果ですが、警察が何かできなかったのか、と思う方が多いかと思います。
上記の時系列をみると、警察はストーカー規制法に基づき、適切に対応しています。
2023年7月に被害者が継続希望をしなかったことから、今の法律では警察はこれ以上の対応ができないです。
法的には問題はないと言わざる得ないのです。

事件を防ぐには!?

被害者が毅然とした態度で対応すべきだったのかなと思います。
何もないから大丈夫と思ってしまったのかも知れません…。
法律には限界があります。人の感情をコントロールはできませんので…。
諸説には、ストーカーの禁止命令の対象になる加害者の場合、命令が出た後も被害者への執着が5年程続くケースがあると言います。
警察が動けるように、何もなくても禁止命令を継続するだけでも、最悪な事態は防げたと思います。

警察も、桶川ストーカー殺人事件を機に警察改革を行い、ストーカー事案等を受理した際は、適切に動く(捜査等)をするようになっています。
相談窓口も充実しています。警察署や警察本部は24時間相談を受理していますので、ストーカーやDV、児童虐待等で相談しようか悩んでいたら、躊躇なく警察に相談をしておくのが一番です。

行為者(被疑者)に対して、明確な意思を示すことも大切だと思います。
警察を介して、今後一切会わないこと・近づかないこと等を取り交わしておくのもひとつの方法かと思います。

ストーカー事件で思うのは、法律を超えて行為者(被疑者)が予想外の行動をしてくるので、感情コントロールするプログラムやカウンセリング等を刑罰とは別に取り入れるべきなのでは、と個人的には思います。

在職中に思ったこと

ストーカー事案等に関しては、本当敏感になっています。
明らかにストーカーと分かれば、生活安全課と連携をしてパトロールを強化したり、110番通報システムで受理があった時は、部署の垣根を越えて対応をしていました。
ストーカーと分からず相談を受理し、内容がストーカー事案等と判明した時は、生活安全課から受理者に厳しい指導があったものでした(私じゃないですよ)。
他には昇任試験で、ストーカー事案に対してどう対応するべきか問題が出題されることもあるので、日頃から勉強をしていました。

届者の意思を明確に・強く持つべきだと思います。
行為者に対してどうしたいのか(今後一切会わないのか、警察が動けるように厳しい措置をしてほしいのか等)、しっかりした意思を持つことが大切だと思いました。

的確なアドバイスになっているか分かりませんが、私なりにまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

詳細なことや今悩んでいる人は、最寄りの警察署に話だけもしてみて下さい。

これを読んで、講演等に興味を持っていただいた方は、お気軽に「日本刑事技術協会」にお問い合わせください。お待ちしています!
HOME - 一般社団法人日本刑事技術協会 (j-keiji.org)
河野博紀 自己紹介
河野 博紀 - 一般社団法人日本刑事技術協会 (j-keiji.org)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?