セルサイドの情報発信がやりにくくなっている話

突然だが、セルサイドの情報発信で著作権の問題で作成不可を食らう場面が数年前から増えてきた。

今まで言われて一番衝撃的だったのが

「IMFに許可取ったんですか?」

である。

次点は

「ISMに許可取ったんですか?」

である。

ISMとはあの米国のISM(全米供給管理協会)である。

同じことを言われた同僚が3人辞めている。

IMFなどは「公的機関なんだから大丈夫だろう」的な感覚もあるが、”IMF copyright”でググると

Personal, Noncommercial Usage Only

とハッキリ出てくる。

ISMも月次レポートを見ようとすると「勝手に再利用するな。許可を取れ」と毎回警告のポップアップが出てくる。

ちなみに小職が個人的に好きな世界銀行(World Bank)は

Creative Commons licenses

という、商用利用可能な状態なのでありがたく使わせてもらっている。

その他、特別な表示がない場合は「とりあえずデータを使っていいか先方に聞け」と審査部から指示が出る。当然だがあまりやりたくはない作業だ。万が一ダメと言われたら自分のせいで会社の全員が使えなくなってしまう。

そういうわけで、セルサイド各社はBBGやRefinitivなどデータベンダーが収蔵しているデータを二次利用する、という形で資料を作り続けている。各社レポートでも数年前は「出所:ISM」と書いてあったのが最近「出所:BLOOMBERG」などにほとんど書き換わっているはずだ。

そうなると次は、データベンダーへの課金如何で情報アクセスのレベルが会社間でバラつくという笑えない事態が出てくる。例えば、ISM製造業が発表され、構成項目の一つである価格指数が市場に影響を及ぼしたのに、レポートでそのグラフを掲載できない、という事態だ。しかも大手他社がそのグラフを掲載している場合などは目も当てられない。市場を動かした決定的要因について分析を提供できない会社から株を買いたいと思うだろうか?また、個人投資家に対しても、investing.comなどを見ている層に対して情報のカバー範囲で劣後してしまう。ここまでくると何のために働いているか分からないというアイデンティティクライシスをもたらすに至る。

結局マクロストラテジーをやろうとすると、データベンダーが収蔵している範囲(及び自社のお寒い課金力)の中だけで考えるBOTになるか、自分の畑であるデータ元の情報保護体制を確認するかの二択になるわけだが、まあまだ前者になるより後者でいる方が生き残れるのではと思い色々考えてやっているわけですはい。

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