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牛泥棒

騙されて 牛は引かれて

振り向き 何度も振り向き去ってゆく

暗幕を張った小学校の映画の日

悔しくて悔しくて 石を蹴った

爪が黒くなった

大人になったら 僕が取り返してやる

爪は 今も黒いまま

あの日の正義が こころにある




昼に 星はない

あるけれど きらめいてくれない

昼の星が見えないから

ずっとずっと 見つめて

あなたを 待つでしょう

恋する人形に みんながなったら

仕事ができない から

昼の星は あるけれど 

    姿を隠しているのさ



石垣で 手をつなぎ

励まし合い すくすくと

生きぬいて 実をつける

通りすがり  食べてゆく人

花を愛|《め》で ほほえむ人

どうぞ どうぞ いいですよ

持ち帰り 育てて下さい

苺は    草の母

母の手は つながり やさしさを教える


つゆくさの花


みちばたで 手をつなぎ

秘そやかに 咲いている

つゆくさの花は うすむらさき

可愛いね 声かけて

子供たち  まあるい目

草刈りの おじさんが

ゴミ袋 手に持って やってきた

やめてくれ いたいいたい いたいよ

叫ぶのさ 苺になりたいよ


あて


日陰の坂道に生まれ 

斜めに 一途に伸びる木を

あてと言う

湾曲して 堅くて

役に立たないと 捨てた人

拾う人がいた

水まわりの台所の踏み板にした

いつまでも

腐ることもなく 美味しい料理ができた

見れば人にも

こんな人達がいる

ありがとう


斜めに


斜めに ひとみ 見開いて

気をつけてね いってらっしゃい

都会がいい所だったら

私も呼んでね

と いもうとは 言った

三つ編みの お下げ髪

一輪挿してあげた

野の花の香り

やはり野に置け

いもうとは すみれ草


きっと


きっとあなたは 片翼を失い

黄金の 木に止まり

ひとり歌 唄ってる

一緒に唄おうよ 僕も片翼さ

寄り添い 比翼の鳥となり

翔び立とう 夢空へ



猫に愛されると 

ぺたぺたと ほっぺに 肉球

もふもふと 尻尾の団扇|《うちわ》

起床 朝ごはん くれ

狸ねいりしてると

痛くない ネコパンチ 早く起きろ

猫に愛されると 

餅を焼いて 食べる妻を知る

その手に肉球がない

あっちっち あっちっち


ひいよひいよひいよ


ひいよ ひいよ ひいよとひよどりが飛んできて

姫こぶしの綿のような 花びらをむしばむ

窓ごしに ひげを 震わせて

にゃにゃにゃと 我が家のペルシャのチャチャは

ひよどりに 恋をする

めじろが飛んでくる

キキキキとひよどりが追い払う

悲しそうに にゃんにゃんにゃんと チャチャは

走りまわる

ひよどりに恋をしたふりをして

本当は めじろを愛しているようだ

きっと そうにちがいない

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