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ファンタジー短編小説

南州丸6


糸が張る

ぐぐっ ぐぐっと 当たりがきた

急ぐな あわてるな いちにいさん

ゆっくりと食わせて 糸を引け

豪は糸を持ち 快はドラムのスイッチを入れ

力を合わせ やさしく やさしく 糸を巻く

太い糸じゃない 切れそうな細い糸を

ゆっくりと ゆっくりと 巻いてゆく

半時も過ぎたろうか

波間にキラリと 銀鱗が顔を出す


今だ 銛を打て

快が 銛を打つ みごとに急所を刺す

るり色の海に 赤い花が咲く

やったぜ 取ったぞ エビス

🎶日向灘なら トビウオで

でっかい鮪を 釣り上げる

ここは下北 津軽の海よ

銀のサンマで 鮪を待てば

取ったぞ 取ったぞ エビス様

取れば 鮪は エビス様



100キロに満たないが

嬉しくて 嬉しくて 海長に電話する

そうか よかったな よかったなぁ

ひと言だけで 男同士の 心は通い合う

崎と恐にメールを入れた

辛いわかれが来ることも知らず

ハートマークを添えて

大間港で 仲間が 待っていた

おめでとう よかったな

今夜は 祝いの宴だ


宴もたけなわに なった頃

みんな よく聞いてくれ

海長が立ち上がり 話しだした

南州丸は あした 母港油津へ 帰港する

よく頑張った

ここで鮪を釣り上げたら

どこの漁場に帰っても 一番になれる

あした仲間を 送ろう

朝一番に 港へ集合だ

一同 シーンとして

今度は 別れの酒だ 酒が沁みる

<続く>


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