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ファンタジー短編小説

南州丸2


目覚めると

何処までも続く 砂丘があった

助かったんだね 兄貴

ここは何処だろう

弟快が 力強く兄の手を握る

冷たい手と手に 少しずつ

ぬくもりが 戻ってくる

その時

きゅっきゅっきゅっ きゅっきゅっきゅっ

砂が 泣く

きゅっきゅっきゅっ きゅっきゅっきゅっ

どんどん近づいて 砂が泣く

制服を着た 天使がやってくる

それも ふたりで


ここは 泣き砂海岸ですか

尋ねると

いいえ違います

長靴|《ちょうか》を履いているので

きっと泣いているように 聞こえたのでしょう

よく見ると 二人の自衛官が 立っている

きりりとしているが 恐くはない

犯人を見る目でもない

仄かにほほえみ 

困っている人を 助ける

やさしい目をしている


ここは青森県

猿ケ森砂丘です

自衛隊の兵器試験場ですので

誰も立ち入ることは できません

あなた達は 意はなく

漂流されたのですね

はい 多分 と答えると

意識がはっきりしないのですね わかりました

申し遅れました

わたくしは 女性自衛官の

海道 崎です 同じく恐|《おそ》れです

調査にご協力下さい

しっかりとした ふたりに

豪と快は 見惚|《みと》れていた



尻屋崎燈台

レンガ造りで 日本一高い

白い燈台が あった

寒立馬|《かんだちめ》が子馬をつれて

遠くから見つめている

母港 油津港 南州丸だと 伝えると

船べりを やさしく叩いて

操舵室を のぞきこんで

損傷は わずかです 大丈夫ですと

答えて 姉妹はほほえんだ


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