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A.ウェイリー版『紫式部 源氏物語2、3』を読み終えて

1を読み終えてから、少し時間が経ってしまいましたが、年末にA.ウェイリー版『紫式部 源氏物語2』を読み終えて、2月中に『紫式部 源氏物語3』を読み終えました。

結構時間がかかりました涙

忙しかったのもありますが、1日1話のペースで終わらないことが多く、ちょっと挫折していました。

2を読み終えて

玉鬘のストーリーと同時に、光源氏が栄華を極めるところ。
あくまで個人の感想ですが、栄華を極める、ためか、
2巻のストーリーは感情が入りにくい印象。
一方で、玉鬘のストーリーは複雑なものを感じる。
不本意な結ばれ方。(これも、暴力といってしまえるかも)
父である頭中将もそれで良し的なところもあり、なんというか、女子軽視が甚だしい。

父といえば、光源氏も父。
息子夕霧に対する育て方も、複雑なものを感じる。
位を与えず、学問を修める方を重視する。
そのことがはからずも、夕霧や周囲に波紋を呼ぶ。

でも、これ、紫式部の弟も大学に入るんだった。
そういうのが原体験であるからなのか。
学問を修めるのは男子。
そういう社会に中に、疑問や思いを感じていたのかも。

3を読み終えて

3からは、光源氏の晩年、というか人生の最後の頃から始まる。
当時の寿命と違うのだけど、晩年が今のわたしの実年齢に近いので、
ちょっと違和感を感じてしまう。

古典で何度も試験に出た、女三宮の降嫁。
知っている話なので、読みやすかった。
でも、この若菜から、なんとなく不穏な感じになる。
それは、紫の上が病に倒れること。
なによりも、柏木と女三宮のこと。
この二人の間で起こったできごとは、宇治十帖のスタートともいえる。

その後、柏木が亡くなり、女三宮の出家、紫の上が亡くなるという
光源氏の周囲にいる人たちがいなくなっていく。

そして、光源氏の息子(本当は柏木の息子)薫の代へと移っていく。
もう一人、光源氏のライバルは頭中将だが、そのライバルとなる位置にいるのが
匂宮。これは、光源氏の孫にあたる。
家系図上は、伯父と甥?

宇治十帖のストーリーから、1話が長い印象。
宇治十帖は、別の人が書いたのでは?とも言われているとか。
自信のない、自己肯定感の低い薫の、なんとも苦しい恋愛ストーリーが始まる。

自己肯定感が低い、というのがいいのか。
光源氏が自意識過剰なのか。

ただ、読んでいて、薫も匂宮も勝手だなっと思う。
相手の気持ちを考えず、自分が結ばれることのみを追求するところが。

光源氏と藤壺、女三宮と柏木とは

ここまで読んでみて、改めて思う。
藤壺は、強い女性だと。

桐壺帝に冷泉帝のことを知られまいとして、秘密を守り通した。
光源氏も同じくである。
藤壺の強さは、母だからなのか。
光源氏を愛していたからなのか。
桐壺帝を愛していたからなのか。
正直、本を読むだけでは読みきれない。
解釈もいくつも存在しそう。
でも、秘密を守り通すという一念は貫き通される。

光源氏もまた、隠すことを必死で行なってきた。

光源氏が、バレていたんじゃないかっと考えるのは
女三宮と柏木の関係を知ったとき。
それまで、何度か不安があるという内容があるが、
なによりも「バレないようにしよう」という印象。
そのことに細心の注意が向けられていた。
女三宮と柏木の関係がわかって初めて
「桐壺帝、父は知っていたのではないか」と考えるのである。

これもまた、さすがにメンタル強い発想。

一方で、女三宮と柏木は、全くその要素がない。
手紙でバレちゃうわけだが、バレているとかいないとかではなく
柏木は「バレたらどうしよう」っとずっと思っている。
女三宮は、ことの全ても理解が及んでいない面もある。

女三宮と柏木は、藤壺と光源氏のように継母と子の関係でもないし
女三宮にいたっては、おそらくは柏木をどの程度認識できていたかもあやしい。
まったく関係性がないところで起こっている。
そのことが、光源氏と藤壺、女三宮と柏木では大きく違う。
この描き方、紫式部は何をどう託したかったのか。

紫の上と光源氏

光源氏のもう一人の最愛の人。
紫の上。
彼女の描かれ方も、悲しい。
彼女は子に恵まれなかった。
そして、晩年は子どものような年齢の女三宮が正妻になる。
これって、人生の大半を光源氏と過ごしてきて、辛すぎる。
でも、弱みを見せない。
救いを求めて佛門に入りたいと願う。

救いを求めるシーンが多いのだけど、
紫の上は何から救ってほしかったのだろう。

藤壺とそっくりで愛されていく紫の上だけど
藤壺と光源氏の関係とは、やはり違う。
どう表現すればいいのだろう。

藤壺と光源氏、と「光る君へ」

大河ドラマ「光る君へ」をみていると、
源氏物語オマージュがたくさんある。
いや、そもそもが、源氏物語をベースにした壮大な平安大河だ。

第9話のオリキャラ(と思われる)の直秀の回、「遠い国へ」を
改めて思うとまひろ(紫式部)と道長との関わりが
ふと、藤壺と光源氏の関係につながってみえた。

藤壺と光源氏も、愛し合っていたけれど越えられない
超えてはいけない壁があった。
まひろと道長には、身分差も含めて、
まひろの母の死、直秀のことが
二人の関係に大きく影響すると思われる。

源氏物語には、愛
光る君へには、別れ(死)

相反する、でも表裏一体が藤壺と光源氏、まひろと道長には
ついて回っていくように感じる。

「光る君へ」の中では、まひろと道長を、
「二人をソウルメイト」としている。
藤壺と光源氏も、秘密を共有し、ひたすら隠し続ける、
ある意味で「ソウルメイト」だ。
だとすると、藤壺と光源氏は、継母としての愛や
まして藤壺の夫である桐壺帝への愛というよりも、
秘密を持ち、守り通すことで、共同戦線的な誓いを立てる
「同志愛」みたいなものを感じる。
どちらも降りることができないゲームの中にいる。

だとすると、女三宮と柏木、紫の上光源氏とも、異なる関係。

そうか、まひろと道長にも同じように
悲しいできごとを背負う関係性を描くのであれば、
ソウルメイトというか、同志愛を1年間楽しむことになるのか。

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