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シャンソンの毒気 : Mon légionnaire

私の印象では、日本語シャンソンはサラリとし過ぎていて、やや面白みに欠けている。日本語詞に変換する段階で灰汁が取り除かれて、まるで抒情歌のようになってしまっている。
シャンソンには、実はもっと毒気がある。グロテスクなところもある。
そんな真の姿を皆さまにご紹介したい。
初回は、こちらのシャンソンで…

Mon légionnaire 愛しの兵隊さん 


Il avait de grands yeux très clairs
Où parfois passaient des éclairs
Comme au ciel passent les orages
Il était plein de tatouages
Que j'ai jamais très bien compris
Son cou portait "pas vu, pas pris"
Sur son cœur on lisait "personne"
Sur son bras droit un mot "raisonne"
彼は澄んだ大きな目をしていて
その目は時々輝いた
まるで空に稲妻が走るみたいに
彼はタトゥーだらけで
あたしには意味がよくわからなかったが…
首には「見つからなければ捕まらない」と描かれ
胸のは「誰も…ない」と読めて
右腕には「よく考えろ」の文字があった

【解説】
légionnaire は外人部隊の兵士のことで、主人公の女性は彼と一夜を過ごした娼婦、あるいは兵隊相手の飲み屋にいる夜の女だと思われる。
この兵隊の身体じゅうはタトゥーで飾られ、しかも何かを意味するような文字のタトゥーだということは、寡黙ながらも自己主張の強い、自分を誇示するような性格が伺われる。
personne は、フランス語で「誰も~でない」という否定の意味があり、胸に書かれているので、俺の胸には誰もいない、つまり、俺は誰も愛さないという意味かもしれない。

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