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221年目の奇跡!1兆匹の蝉地帯へ vol.1


はじめに

 221年目の奇跡、約250年のアメリカの歴史でもまだ2回目しか起きていない奇跡の目撃者になってきた!
 その奇跡の主人公、もとい主蝉公は周期ゼミ、日本では素数ゼミと呼ばれる13年ゼミ、17年ゼミの2種が同時に近い場所に出る年だ(13x17=221)。 このセミの特徴は狭い場所にあふれるように出てくること。2021年にニューヨークなどで大発生し、野球が中断したり、あふれ出したセミを料理したりするのを目にした人がいるかも知れない。しかし、今年は総数1兆匹以上が地上に現れるとも言われるスーパーシケイダ(cicada:セミ)イヤーだ!
 セミ好きのエイティはこの奇跡の年に貯金をはたいてアメリカまでセミに会ってきた!この感動をぜひ皆さんに伝えたい!
 

周期ゼミを見てきて

 まずは感想から。
 50代のエイティが、これまでの人生で出会ったセミの合計をはるかに凌ぐ数のセミとこの数日間で出会った。
 クマゼミも手で簡単に捕まえられるが、ここまで簡単に捕まえられるセミはいない。大量発生エリアでは捕まえる以前に向こうから首筋やら手に乗ってくることもしばしば。こっそり車に勝手に乗っている輩までいた。木の周りの地面が夥しい数の死骸と抜け殻で埋め尽くされていることも。
 しかし見た目はクールだ。特徴の赤目にややマットな黒いボディ。翅は透明度高めで、縁取りは光沢度の高いあめ色。サイズは日本のクマゼミやアブラゼミに見慣れている人からするとびっくりするくらい小ぶりでかわいい。
 「かわいい」そんな声が聞こえてきそうだ!

周期ゼミの姿

 木の上の方からシャーーっと鳴いていても耳障り感はなし。まるで冷水のシャワーを浴びているかのような爽やかさだ!もちろん個人的感想だが。
 セミ全般に言えることだが、飛ぶのは遅くて下手。急旋回やホバリングみたいな器用なことはできず、体当たりする感じで木の枝に不時着する。でも少し離れた所から、草地の上を大群で飛び交っているとまるで涼し気なトンボの群れのようにすら見えて、まさにセミの楽園(涙)
 と、こんな素晴らしい世界を体験して来た!
生きててよかった!
終始笑顔だったが口は開けないようにしていた。もちろんセミが飛び込んでこないように!
 そしてなんと、最後の最後にすごい出会いが待っていた!のだった(驚)!!!
 つづく・・

周期ゼミとは

 まずは今回の主蝉公、周期ゼミについて少し。英語では周期ゼミ(periodical cicada)、日本では素数ゼミとも呼ばれるが、ここでは周期ゼミまたは17年ゼミ、13年ゼミの表記を基本とする。
(この章は旅行とは関係ないので、興味のない方は先にお進みください。)
 
まずは学名Magicicada 魔法ゼミ!この学名を付けた人のセンスを感じる!!
周期ゼミには大きく分けて13年ゼミと17年ゼミの2種がいる。それぞれ亜種がいて13年ゼミが4種、17年ゼミが3種。13年と17年は一緒にいたら素人目に区別つきません。そっくり。

17年ゼミ 左から Magicicada septendecim, Magicicada cassini, Magicicada septendecula
(Cicada safari APPから)
13年ゼミ 左から Magicicada neotredecim, Magicicada tredecim, Magicicada tredecassini, Magicicada tredecula (Cicada safari APPから)


 サイズはツクツクボウシ大でお腹の黄色いseptendecim(17年)、tredecimとneotredecim(13年)。ニイニイゼミより一回り小さいcassini、septendecula(17年)tredecassini、tredecula(13年)に大きく分かれる。cassini、tredecassiniは腹黒で、septendecula、tredeculaには黄色い線が入っていることで区別できる。背中側からは大きさ以外に区別はつかない。
 お気づきの方もいると思うが、septendecim(17年)とneotredecim(13年)、cassiniとtredecassini、septendeculaとtredeculaが近縁。
 写真を見てわかる通り、17年と13年は素人目には区別がつかない。唯一tredecimだけは対応する17年ゼミがいないので13年ゼミとして外見から判断できる。
 17年ゼミと13年ゼミはそれぞれ出てくる年に合わせてbrood(ブルード、種族)番号を振られている。17年ゼミはI~XIV(1~14)で欠番がXI、XII、XV~XVIIの全12ブルード。17年の内、5年は出ない年がある。13年ゼミはXIX、XXII、XXIIIの3ブルードのみ13年に3年しか見ることができない。13年と17年が同じ所に出るわけではなく、それぞれのブルードによって出る地域が異なる。
 2024年に出るのは17年ゼミがブルードXIII、イリノイ州の北半分をはじめ、アイオワ、ウィスコンシン、インディアナ州で出現すると予想されている。13年ゼミがブルードXIXでこちらは13年ゼミ最大の出現エリアを誇るブルードでオクラホマ州の東端を含む、ミズーリ、アイオワ、アーカンソー州より東の大西洋までの南の諸州で出現すると予想されている。そしてイリノイ州の中央辺りを境に17年と13年ゼミが重なって出現するエリアがある。
 

2024年周期ゼミ発声予想図
青点 17年ゼミ ブルードXIII、赤点 13年ゼミ ブルードXIX (Cicada safariより)

旅のお供


 素人のエイティが今回のセミ探索に活用したのは主にこの3つ。
 文献1 17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る! 吉村仁 サイエンス・アイ新書

 こちらは、なぜ17年ゼミが17年おきに出てくるのか、素数ゼミとなづけられたのかを丁寧に説明してくれている本だ。残念ながら、すでに絶版(電子版あり)なので、オンラインの古本屋で見つけて2倍くらいの価格で購入した貴重な一冊。この本にはさらに、17年前の2007年に著者自らイリノイとその周辺エリアでブルードXIIIを採取した貴重な記録も載っており、今回のエイティの調査でも大変参考になった。
 
文献2 A Tale of Two Broods The 2024 Emergence of Periodical cicada Broods XIII and XIX
Gene Kristsky, Ohio Biological Survey
 

 今年の221年目の大発生に合わせて出版された1冊。アマゾンで注文したら次の日に来たのはびっくり。英語の本だけど、きれいな写真と地図だけでも見ているだけで楽しい一冊。周期ゼミの基本情報から、全てのブルードの直近の出現場所のマップやブルードXIIIとXIXの歴史的な記録などの情報満載。
 
 そして最後に紹介するのがアプリ Cicada Safari 。https://www.cicadasafari.org/

 今年のセミ探索にオンタイムで活用できるアプリ。登録したメンバーが周期ゼミを見つけた場所で写真に撮ってアップすると、どこでいつどんな様子で見つけられたかが、参加者で共有できる周期ゼミ情報アプリ。セミマップや誰が何枚写真をアップしたかのランキングや周期ゼミの基本情報とそのリンクなどにも飛べるので、周期ゼミウォッチャー必須アイテム。文献2で使用されている写真も多い。
 ただし、セミを探しに分け入った場所では、電波が悪いことが多く、写真のアップロードに時間がかかりストレスを感じる場面もあった。

Cicada Safariより、探索中に参考にしたマップ。

 では、準備万端、旅に出よう!

旅の日程

5月23日
 翌日の朝が早いのでファーストキャビン関西空港泊。いびきをかく人が周囲にいなければかなり快適空間!

5月24日 
 JAL220 6:40 関空から羽田へ 
 JAL10 11:30 羽田からシカゴオヘア空港
 東へ移動するので日付変わらず到着は9:20 
 シカゴ美術館、ミレニアム公園散策
 HIシカゴ ホステル泊

5月25日  シカゴ周辺で17年ゼミと初対面!!
 ①  ダウナーズグローブ 大量発生
 ②  ラグランジェパーク 鳴き声はするが
 ダグラスパーク 発見できず
 ③  ハンボルトパーク 抜け殻を数個発見
  市内に戻り、シカゴ建築センター見学

5月25日 17年ゼミ探索図

5月26日 シカゴ市内観光
 建築クルーズ(大雨)
 マイケルジョーダンステーキハウス 昼食
 シカゴフィールド博物館

5月27日 
  シカゴ市内 ループ周辺のオブジェ散策
 スプリングフィールド(IL)へ車で移動しながら17年ゼミ探索
 ④  チャナホン・ステート・パーク 大量発生
  ポンティアック イリノイ・ルート66協会(博物館)
  ポンティアック・ファミリー・キッチン 昼食
  周辺の林を探すが、セミは見つからず
 ⑤  キッカプー・クリーク・パーク 吉村先生の本に記載あり 大量発生
  リンカーン墓州立歴史地他、スプリングフィールド散歩
  ヤミー・クラブ(蟹) 夕食
  カーペンター・ストリート・ホテル泊

5月28日 スプリングフィールド市内観光+13年ゼミ探索
  リンカーン博物館他
  Cozy Dog 昼食
 午後から13年ゼミ探索
 ⑥  リンカーン・メモリアル・ガーデン 大量発生
 ⑦  ヘンソン・ロビンソン・ズー周辺 大量発生
 ⑧  ビーチ・パーク(スプリングフィールド湖) 大量発生
      オベッド&アイザックス マイクロブリューワリー 夕食

スプリングフィールド 13年ゼミ探索地図

5月29日 イリノイ州立博物館+13年ゼミ探索 シカゴ戻り
 ⑨  リンカーンズ・ニュー・セーラム観光 やや多い 17年?13年?
   シカゴに戻りながらセミ探索
 ⑩  デイケイター市内 大量発生
 ⑪  マホメット 鳴き声は聞こえるが、大発見!
   Gino’s East ピザ夕食
   HIシカゴ泊

シカゴ⇔スプリングフィールド間地図

5月30日 シカゴ市内観光
  産業科学博物館
  Joe’s Seafood, Prime Steak & Stone Crab 食事
  360シカゴ
5月31日 帰国
  JAL09 12:25 シカゴ オヘア空港から羽田へ
  JAL229 20:55 羽田から関空 ⇒ 帰宅 お疲れさまでした!

次回は11か所のセミ探索の詳細リポートを写真を交えて報告する
乞うご期待!

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