能登半島地震から考える日本の耐震基準① 2024/1/20
今回の能登半島地震で、多くの建物が倒壊していますが、旧耐震基準で建てられた建物のみならず、それ以降の新耐震基準で建てられた建物も倒壊していることが報道されています。
そこで、この耐震基準とは、どの程度のレベルまで耐えられるものなのか、旧耐震とか新耐震とは何なのかについて解説させていただきます。地震大国日本において、どの程度の耐震性能を求めるのかを、建築や改修をする際に考えるきっかけにしていただければと思います。
筆者は、建築に関する業務を25年ほど行っている一級建築士、構造設計一級建築士です。
※2024 年 1 月 の能登半島地震で、お亡くなりになられた方々、そのご家族、ご親族、関係者の方々に対しまして、心よりお悔やみ申し上げますとともに、被災者の皆様につきましては、心よりお見舞いを申し上げます。
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〈目次〉
(1)建築基準法の耐震基準は最低限のもの
(2)「大地震時は倒壊しないこと」が基準
(3)「新耐震基準」は、1981年6月以降に建てられた建物に適用されている
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(1)建築基準法の耐震基準は最低限のもの
建築物の基本的な耐震基準は建築基準法で定められています。建築基準法は、第1条で「…最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を…」という「最低の基準」とされています。
つまり、建築基準法で定められている耐震基準は、あくまで最低限のレベルのものとなります。
(2)「大地震時は倒壊しないこと」が基準
現在の耐震基準は、
①中地震時(震度5強程度を想定)で、軽微な損傷のみで建物は使い続けることができること
〔許容応力度計算により、中地震時に構造耐力上主要な部分(柱、梁、耐力壁など)に生じる力(応力度)が、許容応力度を超えないことを確かめる。〕
②大地震時(震度6強から7程度を想定)で建物が倒壊しないで逃げられること
〔保有水平耐力計算により、大地震時に各階ごとに生じる力(必要保有水平耐力)が、各階ごとの柱や耐力壁などが耐えられる力の合計(保有水平耐力)を超えないこと。
となります。ここで知っておいた方がよいことは、大地震時に求められている基準は、「倒壊しなければよい」ので、耐震基準を満足していても、大地震後に建物を使い続けることができるとは限らないということです。
(3)「新耐震基準」は、1981年6月以降に建てられた建物に適用されている
この基準に適合することが必要となったのが、1981年6月以降に建てられた建物となるので、それ以前に建てられた建物は、もっと緩い耐震基準で建てられており、大地震時に被害を受けるケースが数多くあります。この新耐震基準への改正で、中地震時の建物に作用する地震力が強化されたり、大地震時で建物が倒壊しないという検討がされるようになっています。
また、木造の耐震基準については、新耐震基準への改正の後、2000年6月にも改正され強化されています。
この2000年の改正では、大地震時に、柱が土台から抜け耐力壁が機能しない、南側に大きな窓を設け耐力壁が少なく北側に偏って耐力壁を設けるなど配置バランスが悪い、基礎に鉄筋が十分に入っていないなどの影響で建築物に地震被害があったことから
・柱と土台や梁や筋交いなどの接合部規定
・耐力壁の配置
・基礎の仕様規定
が規準化されています。
このように、大地震により何度も建物被害を受け、その都度耐震基準が強化されてきた歴史があります。