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本当の悩みは人に「言えない」ということ ー『灰羽連盟』の礫から考えるー①

灰羽連盟という2002年に放送されたアニメーションを安倍吉俊が好きなので見たのですが、大変良かったです。世界観、音楽、声優さんの演技。そして何よりアニメーションの演技!そんなわけで鑑賞してから1週間ほど、なんとなく考えたり思い返すことが多かったので、考えたことを少しまとめたいと思います。
ウィキペディアから引用した物語の概要です。

高い空からまっすぐに落ちていく少女。やがて彼女は水に満たされた繭の中で目を覚ます。古びた建物の一室で彼女を迎えたのは背中に飛べない灰色の羽を持つ、「灰羽」と呼ばれる人物たち。繭の中で見ていた空を落ちる夢から、少女は「落下(ラッカ)」と名づけられる。
高い壁に囲まれたグリの街、灰羽たちの暮らすオールドホーム、そこでの仲間たちとの穏やかな日々。戸惑いながらも少しずつその生活に馴染んでいくラッカ。しかしやがて、短い夏の終わりに1つの別れが訪れる。

 私が特に注目したのは灰羽の中でも古参の礫(レキ)というキャラクターです。彼女は過去の侵した過ちや自身の呪われた生い立ちに複雑な感情を抱きながらもその感情を隠し、オールドホームにおいて面倒見の良い姉のような立場をとっています。
 レキの呪われた生い立ちというのは、罪憑きと呼ばれる一部の灰羽に見られる症状で、羽に黒い染みができるものです。また、普通の灰羽と違い祝福を受けられず、最終的には関った人全てから忘れ去られようになるという残酷な運命をそのために彼女は背負わされました。彼女は罪憑きであることによって差別的な扱いを受けたりと紆余曲折があり、傷ついた心を抱えて大人になります。心の傷を塗りつぶすように、彼女はその後は他者に対して親切になります。私見ですが罪憑きであることによる消滅の危機は、彼女が親切になったことで回避されたのだと思います。ですが、罪憑きの象徴でもある羽についた黒いしみはその後も残ったため染料を塗ることで誤魔化しています。しかし、終盤において落下と礫の対話によって、レキが取っていた利他的な態度というのは結局、自身の救済を願う打算から現れていたものだということが表面化します。そのシーンで彼女の心の心象風景も混じった前世の風景が明かされるのですが、それは蒸気機関車の線路に飛び込み自殺をしていたことを暗示するような場面でした。
 そしてそれは、礫が他者への絶望から「助けて」を言えないという問題に起因していたことが明かされます。

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