ウォーターサーバーサーバーコントローラーサーバーセーバー

 ある日、家のテレビでニュースを見ていると玄関のチャイムが鳴った。私は、飲んでいたマグカップをテレビの前の机において立ち上がると、通る声を出してそれに応えた。
「はーい。今行きまーす。」
玄関ドアについている魚眼から外を覗くと、何やら青っぽい帽子と制服を着た穏やかそうな男が笑顔で立っていた。宅配だろうか。そう考えながら、ドアチェーンを外してドアを開ける。
「こんにちは!ウォーターサーバーを設置して毎日富士山のおいしい水を飲んでみませんか?」
しまった。迂闊だった。この手の勧誘は苦手なのに。参った。
「あのー。あんまり興味ないので、お引き取りください。」
私はそう言いながらドアを閉めようとしたところ、男はあまり手入れされていないだろうスニーカーを片足ドアに挟んできた。結構強めに閉めようとしたので、咄嗟にドアノブを持つ腕の力を少し力を緩めてしまった。そこに男の足はグリグリねじ込んでくる。少し恐怖を感じたが、対照的に彼の声はとても紳士的で聞き取りやすい声だった。
「今我が社は期間限定キャンペーンをやってまして〜、ご契約成立でたくさん色んな物がついてくるんですが、お話だけでも、少しでいいんで聞いてもらえませんでしょうか?」
「まあ、はい…。」
今思えばやめておけばよかったと思う。
「それでは、ンン"ッ。改めまして、私アクアウォーターの魚田と申します。こちらどうぞっ。」
「は、ありがとうございます。」
名刺を受け取ってしまった。相手のペースに乗せられる。これだから勧誘は嫌いだ。
「それでですね。先程のキャンペーンと申しますのが、他社とは比べ物にならないほどの大大大大大キャンペーンでして〜。」
「は、はあ…。」
「なんと!今なら!ウォーターサーバー1台ご契約で!なんと!
ウォーターサーバーサーバーをプレゼントします!」
聞き間違いだろうか。男は今たしかにウォーターサーバー「サーバー」と言った。
「えー、それは、ウォーターサーバーサーバーって、なんですか…?」
男は待ってましたとばかりに鞄からファイルを取り出し、それを開いて中の写真を使って説明しだした。
「はいっ。こちらがですね〜、ウォーターサーバーをお客様に提供するための機会でございますっ!お客様がお部屋のどこにいても、コントローラーのボタン一つでウォーターサーバーサーバーがウォーターサーバーを持ってきてくれます!」
「?」
お得なのか?
「ですが、ここで、よくあるお悩みが!みなさんウォーターサーバーサーバーコントローラーをどこかにおいてきてしまうんですよね〜。それを解決するために、今なら!なななんと!ウォーターサーバーサーバーコントローラーサーバーをプレゼントします!すごいでしょ!」
「?」
「これだけでも十分太っ腹だとわかっていただけたと思うんですが、実は、この技術がかなり同業他社から羨ましいらしく…
このコントローラーサーバーを狙う輩が、コントローラーサーバーを破壊しに来ます!」
「!?」
「もちろんそんな事があってはいけないわけです!なので当社は、ウォーターサーバーサーバーコントローラーサーバーデストロイヤーへの対抗策としてここにウォーターサーバーサーバーコントローラーサーバーセーバーも追加でプレゼントします!」
男が次のページをめくると、ウォーターサーバーと同じカラーリングのスタイリッシュなロボットが描かれていた。私は思わず「おお!」と驚きの声を上げてしまった。

1週間後、私はウォーターサーバーサーバーコントローラーサーバーが持ってきたウォーターサーバーサーバーコントローラーを使ってウォーターサーバーサーバーに持ってこさせたウォーターサーバーが注いでくれた水を朝グラスで1杯飲み干すことが習慣になった。直ぐ側ではウォーターサーバーサーバーコントローラーサーバーデストロイヤーとウォーターサーバーサーバーコントローラーサーバーセーバーがウォーターサーバーサーバーコントローラーサーバーを巡って昼夜を問わず戦っている。それを眺めながら飲む富士山の天然水はたしかに美味しかった。なので私は星5を選びました。
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30代 男性 一週間前にご契約 星★★★★★


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