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もしかしたら、これが終わりの始まりになるのかもしれない。

私が社会に出た頃、日本は間違いなく様々な分野で世界一の国でした。
しかしそれ以後の30年間、日本は凋落を続け、一方周囲の国はどんどん発展していきました。
例えば1989年から2019年の間で日本のGDPは1.3倍に増加しましたが、同じ間中国は30倍となりました。
この辺のことはもう皆まで言うな、とうんざりする人も多いことでしょう。

しかし問題の根底はもっと深刻です。
それはかつてハイテク大国といわれ、高い技術力と競争力によって日本の繁栄を支えていた製造業が、次々と衰退し世界のシェアを失っていったことでした。
最初に弱電、次に半導体、そして太陽光パネル、電池、半導体製造装置とかつて世界のシェアの大半を抑えていた分野が見る影もなく凋落していったのです。
これも今更ですよね。

しかし大事なのは、その理由です。
それは決してよく言われる円高などによるコストだけのことではありません。
根本的な理由は、日本企業がダイナミックな資金投入を渋り、先進的な技術開発、特にソフトウエアの開発を怠って小規模な改良で満足している間に、圧倒的な規模の資金を投入し、技術開発に注力したアメリカや中国、あるいは韓国や一部のヨーロッパ諸国に対し、日本の技術は全く太刀打ちができなくなったしまったことにあるのです。

勿論そんなことは特定の業界のみを見た結果論であり、まだ日本の技術力には凄いとこはたくさんある。
円安などで輸出産業が息を吹き返せば、再びよみがえる可能性は十分ある、という反論ももっともなことです。

ただ残念なことにずっとそういわれながら、そうはなりませんでした。
多くの日本の経営者が、テクノロジーで外国に劣ってしまったことをはっきりと目に見える形で見せつけられても、それに目をつむってしまったからです。

かつてAppleからiPhoneが発売されたとき、多くの専門家や端末メーカーは、さして目新しい技術ではない、こんなものは日本では普及しないだろう、例え普及したとしても日本メーカーの方はより良いものが作れるだろうと一蹴していました。
しかし結果は皆が知っている通りです。
専門家と称する人たちや、当時の大メーカーの経営者の見通しはほぼ100%はずれました。
スマホ革命に完全に乗り遅れたことは、あらゆる日本の産業にとって、今に至るまでもっとも致命的な出来事であったろうと私は思います。
そして同じことは多くの産業で起こり、今の惨状を招いたのです。

しかし、そんな中でも唯一気を吐き、崩れ行く日本の製造業の栄光を守り続けた業種がありました。
他でもありません。自動車産業です。

でも、残念ながらそれさえも、もうすぐ終わってしまうかもしれません。
そんな日を予感させるエポックメイキングが出来事が先日ありました。

テスラを凌ぐ世界最大のBEVメーカーであり、時価総額17兆円とテスラ、トヨタに継ぐ世界三位の自動車メーカーである、中国のBYDが正式に日本市場への参入を発表したのです。

中国車なんて日本で売れるはずがない、と思う人もいるもかもしれませんが、そんなことはありません。
BYDはすでに日本市場でもEVバスの7割近いシェアを占めています。
これはコストが安いからではありません。
圧倒的に『技術力が優れている』からです。

そして、大事なのは中国車が売れる売れないかではないのです。
今まで日本の消費者はEVの分野では海外の優れたテクノロジーにほとんど触れることができませんでした。無知ゆえにガラパゴスのままだったのです。
しかし、これからは違います。
本当のテクノロジーの世界を知ってしまった、あるいは知ってしまうのです。

日本の自動車メーカーは真剣に危機感を抱かないのなら、間違いなくこれは日本の自動車産業にとって、あるいは自動車に支えられた日本の製造業の終わりの始まりになるでしょう。
決してそうならないよう、一日も早く、危機を直視し、本気を出して立ち向かってほしいと心から願いたいものです。