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抱きしめて

前のめりな姿勢で
ピアノに向かっている君の
猫背の向こうから
沸き上がってくるメロディー
私のリクエストではないその曲に
時を忘れる

君の背中が伸びると
いつの間にか、鈴虫が
鳴いていたんだね
得意そうな君の
眩しい笑顔を
どうか、いつまでもと
祈るようにみつめる

まだ幼かった君を
ここへ連れてきたのは
間違いだったかもしれない
それしかなかったかもしれない

慈しみあふれた君の瞳は
今も、変わらずここにある
人生なんて
まばたきする間に
終わってしまうから
どうか、この今の一瞬を
精一杯、抱きしめて
抱きしめて
微笑みを交わそう

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