23.天国への入り口

 4年生になっても、いじめの状況は変わらなかった。
けど、クラスの状況も特に変化なく、教室以外のところでは、友達の家に行ったりしていたし、いじめのことを女の子達も特に聞いてくることもなく、私も話すことはなかった。

もちろん、私の悪口を言う子もいたけど、いじめっ子集団くん達の仲間ではない。
個人的に私が嫌いだったのだと思う。

恐怖なのは教室の中だけだった。

不登校になるわけでもなかったが、教室に入るのが嫌だった。

保健室で過ごした…という話をよく聞くが、当時の私は、保健室は病人や怪我人が行くところで、逃げ込む場所とは考えもつかなかった。
…というか、保健室に行った記憶がない。

私の逃げ場は、教会の日曜学校。
心の拠り所。
誰も何も言わないし、学校生活のことを聞いてくる人もいない。
きっと知っていたのだと思うけど、そっとしておいてくれたのかな。

母はずっと私の転校先を探していた。
「やっぱり公立はダメだわ。
先生に話しても何もしてくれないし
私立の学校探してるからね。」

私はどうでもよかった。
5年生まで我慢したら、クラス替えして(2クラスしかないけど)、もしかしたら状況が変わるかもしれない。

……というか……
私が転校3日目に助けた女子は誰なのさ。
助けたのにお礼も言わないでさ、
私がいじめのターゲットになったことで、アンタは快適に学校生活を送れているはず!!
なのに、名乗り出もしないで、お礼も言わず、卑怯なやつ!!
ろくな人生歩めないよ。

…と、未だに思っている。
なんとしつこい私。

4年生の一学期も終わりの頃、母が
「学校、見つかったよ!!
とってもいい学校。
面接に行くわよ。」

母に連れられて新しく入る学校に行った。
そこはキリスト教の私立の小学校で、幼稚園と小学校のみの学校。
1年生から3年生までと、4年生から6年生までが同じ担任となる。

4年生の担任のE先生と初めて顔を合わせた。
E先生は、校長先生の義理の息子さんで、校長先生のご家族と、同じ敷地内に住居があり、学校のお隣。

学校の校章は…夏の花…私の大好きな花。
黒い門を入ると、噴水があって、その周りには花壇。
そしてマリア様の像。
噴水の隣に大きな幹の木があって、その奥に校舎がある。
校庭の道路側には雲梯、校舎側と奥にサッカーゴール。

先生は、私だけを連れて誰もいない学校の中を案内してくれた。
今は新しくなっているので、昔の校舎。

ちょっとうる覚えだったので、E先生と数人の友人に直接確認^^;

1階は事務室・校長室と幼稚園。
北側にパンやお茶を扱う部屋や倉庫など。
2階に1〜3年生の教室、会議室、職員室、保健室、理科室、図工室。
3階に4〜6年生の教室、講堂(兼体育館)の奥に音楽室、図書室

…3階の教室を見て、廊下の突き当たりにある講堂の入り口に先生は立って
「講堂、小さいでしょう?」

そして、窓から見える校庭を見て
「校庭、狭いでしょう?」

「生徒の数も少ないんですよ。
一学年1クラスです。
驚いたでしょう?」

「それはね、
あまり生徒の数が多いと、先生達が生徒全員の名前を覚えられないでしょう?
そのためにM学園では生徒の数を増やさないのです。」

「まさえさんは、この学校に入りたいですか?」

私は頷いた。

この先生なら、きっとわたしを助けてくれる。
先生、助けて…
わたしをこの学校へ入れてくれますか?

そんな思いで、小さい私は先生を見上げていた。

「それでは、待ってますよ。」

泣きそうだった。

わたし、本当にこの学校に来ていいの?
ありがとうございます、先生。
わたし、がんばります。

同時期に学園に転入予定のAさんという女の子がいて、彼女は8月の行事、臨海学校から参加する事になっていると聞いた。
でも、私は知らない人たちの中に一人で入るのは不安だったので、夏休みに行われる自由参加の補習授業から行くことになった。

と、同時に、今いる公立小学校の夏のプール授業に参加して、それで終わりということになった。

「あなた泳げないんだから、学校にお願いしておいたから、プールだけ通いなさい。」

は〜⁉︎
やっとこの学校から出られると思ったのに、ママは本当にわたしの気持ちは分かってるの⁉︎

と思った。
いじめより、私が泳げないということの方が、彼女にとったら重要な事だったのか。

「洪水になった時、泳げれば助かるのよ。」
と、よく言っていた。

まぁ、行き先が決まったのだから、もう私に怖いものは何もない!!

M学園の臨海学校が終わるまで、私は公立小学校のプールに通った。
女の子達と一緒に泳いでいると、いじめっ子集団くん、ジャイアンとスネ夫が近づいてきて、
「お前、転校するんだってな。」
と言ってきた。

私が返事をするより先に
「そうよ。
だからもういじめないで。
今日もプールが終わったらウチで遊ぶんだから!!
近寄らないでよ!!」

「ふぅ〜ん…」

つまらなそうには彼らは離れて行った。

ありがとう。
だけど、もっと早くそう言ってもらいたかったよ。

みんなバイバイ。

…続く……🌻

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?