アルミ缶とスチール缶の違い

仕事をもうひと頑張りしたいとき、ほっと一息つきたいときによくコーヒーを飲む。最近のお気に入りはタリーズブラックだ。しかし、一昔前はコーヒーといえば容量はだいたい190gのスチール缶だったような気がするが、最近はアルミ缶のコーヒーをよく見る。この容器もアルミだ。この容器の変遷はいったい何を意味しているのだろうか。

〇アルミ缶とスチール缶の違い
まずは、アルミ缶とスチール缶の違いについて調べてみた。

よくあるご質問の回答によると、
コカ・コーラ社製品では、その製造方法(充填方法)によって、缶内圧が大気圧より高い製品(陽圧)と、缶内圧が大気圧より低い製品(陰圧)があります。炭酸飲料は内溶液自体がガスを含むため缶内圧が高くなり、お茶製品、アクエリアス、果汁入り飲料なども充填時の加工により内圧が高くなっている場合があります。内圧が高い製品は、この内圧によって強度を保つことができるため、缶そのものに強度が高いスチール缶と、比較的厚みの薄いアルミ缶の両方が使用されています。一方、缶内圧が大気圧より低い製品には強度が高いスチール缶が使用されています。

陽圧とは、缶内部からの圧力。例えば炭酸飲料は炭酸が溶け込んでいるから、陽圧(内側からの圧力)が高くなる。陰圧とは缶外部からの圧力。例えばコーヒーなど熱いまま充填する飲料は冷めたときに、中の圧力が下がってしまうため、陰圧(外側からの圧力)が高くなる。
容器の目的の一つは、中身である飲料をきちんと保持することである。陽圧が高ければ、中からの圧力によって容器の形を維持しやすいため厚みの薄いアルミ缶も使用することができる。陰圧が高いと容器が大気圧によってへこんでしまう可能性が高いため、容器自体に強度があるスチール缶が使用されるとのことだ。
なるほど、容器にどのような状態の飲料を充てんするかによって、容器を使い分けていたのか。しかし、それではなぜ最近アルミ缶のコーヒーを見かけようになったのだろうか。

〇そもそもなぜアルミ缶のコーヒーを見かけなかったのか。
缶製品において最も危険なものはボツリヌス菌である。この菌は嫌気条件下(酸素が少ない条件下)で増殖する。そしてこのボツリヌス菌が産生するボツリヌストキシンは毒性が極めて強く、体重70kgのヒトにおけるボツリヌス毒素の推定致死量は経口的投与で70 μgとされている。いまいちよくわからない。耳かき一杯で0.1gらしいので、それで約1400人の致死量である。とんでもない毒素だ。実際に1984年の真空パック詰めからしレンコン事件では9名の死者が出るなど、密閉容器を扱う際は最も注意しなければならない細菌のひとつだろう。このボツリヌス菌が増殖しているかどうか見分ける手段のひとつとして、容器が膨張しているかどうかが一つの指標となる。しかし、アルミ缶は強度を保つために窒素ガスを入れ、内圧を高めているため、ボツリヌス菌が増殖していても気づくことが困難になる。そのため、陽圧缶に入っているミルク添加低酸性飲料については製造を自粛するように業界に求めてきた。

しかし、製造技術の発展、HACCPを主体とした安全管理手法が充実した結果、以下の要件を満たせば「陽圧缶入りミルク添加低酸性飲料製造自粛」の対象から除外して製造を行うことができるようになった。
➀総合衛生管理製造過程、ISO22000もしくはFSSC22000の承認を得ていること。
➁当該製品の密封は殺菌直後および出荷前に缶内圧を測定し製品の安全性を保障するに十分な缶内圧が確保されていることを確認すること。
➂当該製品の殺菌に関してはHACCP方式に工程管理手法を採用し、ボツリヌス菌を危害原因物質として危害分析したうえで殺菌工程を重要管理点として管理すること。
➃密封管理にあたるものは巻締主任技術者の資格を持っていること
➄殺菌条件および管理項目の設計をするものは殺菌管理主任技術者の資格を持っていること
➅➀~➄の方法で製造するものは、製品の販売に先立ち、製品に関する情報を全国清涼飲料工業会に届出を行うこと。

なるほど、普段飲んでいる飲料はこのように厳重に管理されていたのかと思うと感心する。確かに、常温で保存したり、温めたり、冷やしたり、様々な温度帯で管理される缶飲料。いつどんな時に飲んでも安全が保たれるようにできていた。

〇飲む際の注意点
容器によって飲むポイントがある。窒素ガスの充てんなどによって缶内部の圧力が高いアルミ缶は飲む前に缶を振ってしまうと、窒素と一緒に中身の液が噴き出してしまうことが多い。そのため「振らずに水平にゆっくり開栓してください」などの注意書きがあるはずだ。 一方、スチール缶は、缶内部の圧力が外よりも低くなっているので、振っても噴き出すことは少なく「よく振ってからお飲みください。」などと書いてあるはずだ。このように缶に書いてある注意書きは内容物ではなく、缶の性質によるものなので、注意書きをよく読んで、白いシャツにコーヒーをこぼすことの無いように楽しんでほしい。

〇参考資料
コカ・コーラよくあるご質問
https://j.cocacola.co.jp/info/faq/detail.htm?faq=18035
日本缶詰びん詰レトルト食品協会  
https://www.jca-can.or.jp/publishing/kanzumejiho/jiho14/jiho1408_02.pdf




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