まだ話してない秘密があるの


また夜が来て、いつもの時間がやってきた。
彼は本当に優しかった。
会ったことなんかないけど、彼の声と言葉が本当に好きだった。そんな自分の気持ちに気付きながら隠しながら、いつもどおり「妹ちゃん」をした。
関係を壊したくない。このもどかしい感じの距離感がいいんだと言い聞かせていた。

いつかは、絵本の読み聞かせをしてくれた。
眠れなかったわたしが眠れるようにと。
タイトルは忘れてしまったのだけど、
春と秋がお手紙を交換して、夏と冬がお手紙を届けるおはなしだった。
絵本の最後に彼はこう付け加えてくれた。
まだ会ったことのないあなたへ、いつかお会いできますように

会いたいと言ってくれた。
嬉しかった。本当に。

でも、近づいて来られるのが、少し不安でもあった。
わたしは彼に話してないことがあったから。

話すことで、離れていく可能性も考えたから。
わたしは既に彼の存在自体に救われていたところがあったからいなくなられては困ると思った。

でも、本当は会いたい。
何も言わずに会ってガッカリされるのも嫌だった。


迷った..


伝えることにした。
通話中にLINEで文字を打った。


ドキドキした。


彼がわたしが送った文字を読んですぐ、
話してくれてありがとう。


嫌いになってない?


そんなことで嫌いにならない


よかった。。


ついでにもうひとつのまだ話してなかった話をした。

退職の話だ。
彼にはやりたいことがあって、辞めるとはなしていた。
でも、実際には、パワハラ上司に打ち勝てず、こころを病んでしまった挙句に辞めるのだ。逃げるように。

それを話してもなお、優しかった。
早く気づいて決断できたのえらいと思うよ。

この話に関しては、ほとんどの人が辞めないほうがいいよっと言っていたから。

わたしは嬉しかった。
これ以外にもどれだけの黒歴史を話しても彼は引いていくことなく、受け止めてくれた。


本当に嬉しかった。


翌朝、おはようのLINEに
「昨日はありがと。お兄ちゃんと話してると、
欠陥品でも生きてていいんだって思えるよ」と添えて送るとすぐ返信がきた。


「欠陥品なんかじゃないよ」


受け入れてもらえと思った。

幸せで溶けそうだった。

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