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猫2

悲しい猫だったと思っていた

勝手に懐いたのも私で
あなたが無理にそうしたわけでもないのに
自然に懐いてしまったんだ

その腕の中はとても居心地が良かったから
甘えられる時は本当に幸せだったのに

気まぐれなあなたが
じゃ、またねといなくなる度
とてつもない寂しさに襲われて
どうしても主導権が握れない 
情けない猫だったから

本当は自由に遊び回って困らせたかったのに
静かにあなたを待ってしまう
そんな悲しい猫だったから

待ってる時の苦しさや
見えない未来への不安は
あなたには話せずにいた

次こそ言おう
今度こそ寂しいよって
もっといたいよって

離さないでって
言いたかったのに

口から出た言葉は
まるで違っていて
あなたのところにずっといると思わないで
なんて
もう待っているのが辛いし
不安な気持ちも限界だから
自由になるよ  
なんて言ってしまった

まるで悪い猫のように

勝手に懐いて勝手に腕をすり抜ける
ただの気まぐれな猫になっていた

あなたが傷つくわけなんて
ないと思っていたから
自分の辛さだけをぶつけてしまった

あなたは少し驚いて
オマエがそう言うんなら仕方ないな
オマエを傷つけるのは嫌だから
オマエのことは本気だったんだけどな

と言って

そっと床に下ろされてしまった

あなたは大人だから
傷ついたりするわけないと 
勝手に思っていたけれど

寂しい目をしていた

そんなはずじゃなかったのに

どこへでも自由にお行き
と笑顔でる言われると思っていた

すぐに後ろを向いていなくなると思っていた

見送るよ

と言われて
悪い猫になりきらないと
悲し過ぎて

くるりと背中を向けて
振り返らずに去るしかなかった

本当は違うんだよ
もっと甘えたかったんだよ

あなたを傷つけてしまったことに
後から気づく
何もわかっていない
自分勝手なただの気まぐれで
あなたを振り回しただけの
本当の猫だったのかもしれない

あなたにとって
私は気まぐれな猫だったのかもしれない

自分だけが悲しい猫だと
思っていたのかもしれない

もうあの腕の中に戻ることはできないのだろうか



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