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【IR分析 #36】買うならどのくらい?を読み解く "東洋炭素"(5310) 2023.12期

いい銘柄を、安いときに買う」ために、注目に値する企業のIR情報(※) から、知っておくべきポイントと「買うならどのくらい?」を読み解いて、投資候補をストックすることを目的としています。

IR情報は事実情報という意味で投資に有益ですが、専門的で量も多いので、時短で理解しやすいよう同じ形式で簡潔にまとめていきます。

今回は、「増益予想●●」であることを理由にこの銘柄を取り上げています。

これは私自身が初期的な分析として使う手法ですが、みなさんが興味を持てる企業を見つける一助になれば幸いです。

※IR情報
・有価証券報告書 決算短信 決算説明資料
・2023.12期 2023/1/1~2023/12/31

本記事は開示情報等を基にした客観的な分析を提供するもので特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また期中の業績修正等は反映しておらずリアルタイムの情報ではありません。記載の数値や分析結果は参考情報であり将来の価格や投資成果を保証するものではありません。内容には十分注意を払っていますが誤りが含まれる可能性があります。また情報は予告なく変更・修正される場合があります。有料部分の「買うならどのくらい?」は、過去の業績データや市場評価の傾向を基に理論株価や目安を提示したもので、これらは一般的な投資手法に基づく参考値であり特定の価格や投資行動を推奨するものではありません。また市場環境や業績修正のなどの影響により変動する可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任で慎重に行ってください。投資はリスクを伴いますのでこれらをご理解の上でご利用ください。


まず、この企業の利益の背景を理解します。その上で、企業自身が考える今後の見通しを確認します。


Q1 どんな会社?


【概要】カーボン製品の開発・製造・販売。特に「特殊黒鉛製品」を軸に事業を展開。主力製品は半導体製造や宇宙航空、エネルギー、自動車産業で、エレクトロニクス分野の半導体向けの割合が大きい。北米、欧州、アジアも順調に拡大し業界シェアは高い。

【特徴】世界初の静水圧成形法で開発した等方性黒鉛製品は高温耐性や熱・電気伝導性、加工性に優れ、最先端産業で欠かせない素材。半導体製造用が需要を牽引し、宇宙、医療分野にも採用。黒鉛の機能性コーティング複合材料を開発し新たな用途と付加価値を創出。


Q2 どんな状況?


【環境】カーボンニュートラルやデジタル化の加速により、炭素素材の需要は増加傾向にある。特に半導体関連製品の需要が旺盛であり、成長を牽引。一方で、原燃料価格の高騰、環境規制の厳格化への適応が課題。事業ポートフォリオの多様化や新技術の確立を進める。

【取組】「どこにもないものを、あるに」を掲げ、エレクトロニクス分野やSiC半導体向け特殊黒鉛製品の拡充に注力。限界利益率の向上や環境負荷低減に向けた取り組みを強化。中期経営計画では、2028年に売上880億円、営業利益220億円が目標。


Q3 業績は?


2023年12月期実績:増収増益
主な要因は、エレクトロニクス分野におけるSiC半導体向け製品の堅調な需要と冶金分野の設備投資増加。円安効果や製品価格の転嫁も限界利益の拡大に寄与。固定費や原燃料コストは増加したが利益拡大で吸収。

2024年12月期予想:増収増益
半導体分野ではSiC半導体向け特殊黒鉛製品の需要がさらに拡大。また、冶金分野やエネルギー分野でも設備投資が堅調に推移する見込み。生産設備への投資加速が中長期的な利益拡大につながると考えられる。


次に、「買うならどのくらい?」を考えます。
株価は「利益(EPS)×市場評価(PER)」で決まるため、例年の利益予想と市場評価の傾向を分析し、それぞれの要素について考察します。


Q4 予想の傾向は?


【売上予想】前年比+10%は、過去5期の範囲の中でも上限に近く、比較的積極的な水準。達成度は過去5期平均で104%と高く、ブレも少ない。上振れ傾向が見られるため、会社予想は現実的で今期予想の信ぴょう性は高いと考えられる。

【純利益予想】前年比+1%は、過去5期の範囲の中で控えめな水準。達成度は平均125%で大幅な上振れが多く、会社予想は保守的な傾向が。過去の高い達成率から信ぴょう性は高いと評価できる。

【考察】半導体需要拡大で成長期待が持てる一方、コスト増加を考慮したものと考えられる。過去の高い達成率や純利益の上振れ余地から大きなリスクは低いと考えられるが、成長期待と安定性のバランスを踏まえ、「利益の要素」に関しては中立的な印象を受ける。


Q5 市場評価の傾向は?


【評価の傾向】EPSが上昇してもPERは低下しており、市場は成長を一過性と見て慎重な姿勢で成長期待は限定的と考えられる。また、5期前と比べてEPSは大幅増加しているが、PERは低下。利益成長が市場評価に反映されておらず、過小評価の傾向が見られる。

【直近の評価】直近期のPERは13.4倍と20倍基準を下回り割安感があるが、高値PER平均にも届かず、市場の成長期待は大きな変化がない状態といえる。

【考察】市場は成長期待を慎重に評価していると考えられる。過去の達成度や利益成長を踏まえれば過小評価の可能性が高いが、成長期待が強く反映されているわけではないため、「市場評価の要素」に関しては中立的な印象を受ける。


最後に、「買うならどのくらい?」を具体的に検討します。

過去の市場評価から相対的に低い水準を算出し、さらに水準を絞るために、リスク選好に応じて3つのシナリオを提示します。また、どのシナリオを選ぶかの参考としてこれまでの分析を整理しています。

これにより、現在の株価がどの位置にあるのかを把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備をしておくことができます。

あくまで初期的な分析ですが、合理的な手法だと考えています。この先は有料ですが、読み放題のメンバーシップでは初月無料でご覧いただけますので、ぜひご活用ください。


Q6 買うならどのくらい?


【概ね安い水準】
異例値を除く直近5期の安値PERの平均(10.3倍)〜高値PERの平均(17.5倍)を概ねの評価レンジとすると、その中間である13.9倍以下程度が「概ね安い水準」と想定できる。

【投資シナリオ】
この水準に今期予想EPS(362.4円)を当てはめると、株価レンジは3,740円~5,046円の範囲となる。この範囲をさらに絞り込むために、リスク許容度に応じた以下のシナリオがひとつの目安として考えられる。

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