パンを食べて泣く
新婚当初、住んでいたマンションのすぐそばにあったベーカリーカフェ。
たまプラーザでは知らない人がいないと思うくらい、地域の人々から愛されている『徳多朗』というパン屋さんが、パンと合う料理も味わってほしい…という思いで作られたお店です。
私たち夫婦は、毎週土曜日にここでパンを買うのが習慣でした。
いつも混んでいるけど、たまに空いているな…と思うときはカフェで頂く。
とにかくファンが多いお店だけど、そのお客のほとんどは女性。珍しく男性の常連客であるうちの主人は、すぐに顔を覚えてもらうことができました。
私たち夫婦が毎週必ず買うフォカッチャサンド(生ハム・ルッコラ・たまごのめちゃくちゃボリューミーなサンドイッチ)は、
「遅かった!売り切れちゃった!」
と思っても、店員さんがそっと取っておいてくれて、
「取っておきましたよ」😉
と冷蔵庫から出してくれるほど。
私が妊娠して、おなかが大きくなってくると、ますます店員さんは話しかけてくれるようになりました。
産休に入ると、いろいろな友達をたまプラーザに呼んでは、このカフェに連れて行きました。
出産間近になると、店員さん達は「お産がんばってくださいね!」と笑顔で送り出してくれました。
出産後、1~2か月くらいの娘の顔を見せに行くと、「うわ~かわいい♡」と店員さんみなさんが喜んでくれました。
すぐに名前を覚えてくれて、土曜日にパンを買いに行くごとに、娘の名前を呼んで話しかけてくれました。
もちろん、娘の離乳食はこちらのパンがデビューです。
パンが食べられるようになると、娘用に小さな白パンに顔を描いて出してくれました。
東日本大震災のとき、パンを入手するのが難しい時期があったけど、こちらのカフェはパンを売ってくれました。
娘が保育園に通い出し、帰り道…閉店前のカフェに寄ると、サービスして2倍くらいのパンを渡してくれました。
息子を妊娠して、息子も娘と同じように、このカフェのパンの味で育つのかな~と思っていた矢先に、閉店のお知らせを聞きました。
我が家の第二のダイニングくらいに思っていた、このお店がなくなることは本当に本当に悲しくて寂しかったけど、
閉店最後の日まで、常連客として通い、お別れをしました。
このお店が閉店した後、我が家は、同じたまプラーザの隣町の少し大きなマンションに引っ越しました。
引っ越して2年くらい経った頃かな…
「Utero(ウテロ)」というママカフェで、
この「徳多朗」のオーナー、徳永久美子さんによる「パンと料理の会」が開かれることになりました。
久美子さんは、私たちが通っていたカフェにはいらっしゃらず、面識はありませんでしたが、とにかくここのパンと料理の味が懐かしくて、前のめりで参加。
久美子さんがサイドメニューで出してくれたサラダを頂いた途端。
ポロポロポロッ
涙がこぼれてきたんです。
なんだろう…。
言葉よりも、思考よりも先に涙が止まらない。
泣きながらサラダを食べていくうちに、
私が大事にしていた、うれしかった思い出が次から次へと蘇ってきたのです。
まるでリアル版「マッチ売りの少女」。
こんな不思議な体験は初めてでした。
徳多朗というパン屋さん自体は、他にも少しだけど店舗があって、行こうと思えばパンを食べることができました。
でも、料理の方はなかなか難しい。
パンを買うのでも、とても混んでいて時間がかかるから、自然に足を向ける回数が減っていきました。
そんな最近。
「吉貯金」と言う話を聞いて、吉方位のカフェやコンビニ、自動販売機などをチェックしていたら、
なんと徳多朗さんがまさにそこにあったことに気付きました。
思い立って、パンを買いに行きました。
相変わらず混んでいて、レジまで時間がかかります😂
レジまで並ぶ時間の間、店内を眺め、いろんなパンやサイドメニューなどを眺める。
すると、ふと、
オーナー久美子さんの手書きの文字が目に止まりました。
うわぁ…懐かしい。
久美子さんの字やメニューの文章を眺めていると、
またまた、いろんな思い出が込み上げてきました。
前の料理の会では、初めての出産子育ての思い出がぶわーーーーーっと込み上げてきましたが、
今日は、新婚当初、主人と楽しく通っていた思い出が走馬灯のように。。。。
このパン屋さんには、私たち夫婦の幸せな記憶が詰め込まれていたのです。
思わず行列に並びながら泣きそうになりました。
そして、家に帰って、マルゲリータを食べると、じわっと涙が込み上げてきました。
食べものを食べて、涙が出るなんて。
まるでヒプノセラピーのような癒しの時間。
癒されようとねらって買いに行くと、あまりこういうことにはならないんですけどね。
たとえ、涙は出なくても十分温かい気持ちにはなれます。
こんな素敵なパン屋さんが、すぐそこにあった。そして形は違えども今もある。
そんなことに気付けて良かった。
休日の一コマでした。
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